運転免許証の有効期間,原則5年に


無免許・飲酒・引き逃げetc.悪質・危険な運転には
きびしい罰則と点数の大幅引上げ

道路交通法の改正☆H14.6.1スタート☆


 交通事故による被害は、平成12年には何と死者9000人、負傷者115万人を超える事態となっています。
 「道路交通法」が改正され、平成14年6月1日から、一般の善良なドライバーには便利な規制緩和をする一方、悪質で危険なドライバーをよりきびしく取り締まって、悲惨な交通事故を減らそうとの取り組みが始まりました。

免許証――
  有効期間は原則5年
  更新は誕生日前後2ヶ月

 これまでは、優良ドライバーのみに、ゴールド免許証として5年間有効の運転免許証が与えられてきました。この規定はきびしいもので、過去5年以内に、駐車違反・免許証不携帯等々どんな軽微な違反も犯していない場合にのみ交付されていました。
 平成14年6月1日からは、原則として、免許証の有効期間は5年に延長されました。優良ドライバーに加え、過去5年の違反歴が軽微(3点以下の違反)なドライバーの免許証も、有効期間は5年となります(法92条の2第1項、令33条の7)。この措置により、約6割のドライバーが5年間有効の免許証の対象となりました。
 ただ、更新時講習については次の4種類に分かれます。

 また、免許証の更新期間も、これまでの誕生日前1ヶ月から、誕生日をはさんだ2ヶ月に延長され便利になりました(法101条)。現在お手持ちの免許証に「誕生日まで有効」と記載されていても、有効期間の末日は自然に1ヶ月延長されます。さらに、優良ドライバーについては、誕生日前なら、住所地以外での更新手続きもできるようになりました(法101条の2の2)。
 なお、これらの措置は、誕生日が7月1日以降の方が対象となりますのでご注意ください。

70歳以上には――
    高齢者講習とシルバーマーク


 70歳以上のドライバーについては、免許証の有効年数は従来どおりですが、更新時に義務づけられている「高齢者講習」の対象年齢が、75歳以上から70歳以上に引き下げられました(法101条の4)。また、シルバーマーク(高齢運転者標識)をつけるよう努める年齢も同様に引き下げられ、70歳以上に拡大されました(法71条の5第2項)。
 ちなみに、高齢で自分の運転に自信がなくなれば免許証を返納できる制度がありますが、身分証がわりに保持する方も多いことから、新たに、免許証を返納しても身分証明書として通用する「運転経歴証明書」の交付を受けることができるようになりました(法104条の4第6項)。

障害者にも受験の機会
    ――個別に判断します


 一方、障害者についての欠格事由は廃止されます。これまでは、精神病者・知的障害者・てんかん病者・目が見えない者・耳が聞こえない者・口がきけない者等々が列挙され、こうした障害者については、“18歳未満の者は普通免許がとれない”とする年齢制限と同じ扱いで、受験資格もありませんでした。
 今回の改正により、安全な運転に支障があるかどうかを個別に判断することとしたものです。これにより、障害者にも受験資格が与えられたわけですが、当然ながら、たとえ試験に合格しても、交通安全の観点から免許の拒否・保留がありえますし、免許の取消し・停止がなされることもあります。
 また、肢体不自由であるため免許証に条件が付いているときには、車に身体障害者標識(四つ葉マーク)をつけるよう努めることとしました。このマークをつけた車には、若葉マークやシルバーマークの車と同様、幅寄せや割り込みは禁止されます(法71条の5第3項)。

危険な運転には、厳罰でのぞみます

 今回の法改正のもう一つの大きな柱は、悪質なドライバーをきびしく取り締まるということです。
 とくに、「飲酒」「薬物」「過労」「無免許」「暴走行為」「ひき逃げ」は、単なる不注意とは異なり、ドライバーは危険等を承知で運転しているわけです。こうした悪質な行為に対して、懲役刑・罰金刑・反則点数のいずれもが、一斉に大幅に引き上げられました(法117条外、令別表第1外)。

表1  悪質・危険な運転に対する罰則
違反行為罰 則:下段の(  )は旧規定
救護義務違反
(ひき逃げ)
5年以下の懲役または50万円以下の罰金
(3年)         (20万円)
飲酒運転
(酒酔い)
3年以下の懲役または50万円以下の罰金
(2年)         (10万円)
飲酒運転
(酒気帯び)
1年以下の懲役または30万円以下の罰金
(3ヶ月)         (5万円)
過労運転
(麻薬等薬物)
3年以下の懲役または50万円以下の罰金
(2年)         (10万円)
過労運転
(その他)
1年以下の懲役または30万円以下の罰金
(6ヶ月)         (10万円)
無免許等運転1年以下の懲役または30万円以下の罰金
(6ヶ月)         (10万円)
共同危険行為等2年以下の懲役または50万円以下の罰金
(6ヶ月)         (10万円)
 懲役・罰金刑は、表1のとおりです。たとえば、「飲酒運転(酒酔い=アルコールの影響で正常な運転ができないおそれがある状態)」については、これまでの2年以下の懲役または10万円以下の罰金から、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に引き上げられ、暴走族を取り締まる「共同危険行為等」については、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金から、2年以下の懲役または50万円以下の罰金へと大幅に引き上げられています。
 とくに「飲酒」についてはきびしく取り締まることとなり、これまでは呼気検査でアルコール濃度0.25mg/l以上が「酒気帯び」とされていたものが、0.15mg/l以上とその基準が引き下げられました。これは、体重60kgの人がビール大びん1本を飲んで15分間検出される数字といわれます。
 さらに、表1の罰則はすべて道路交通法での定めであり、“こうした行為をしたこと自体”を対象に取り締まられる際の規定にすぎません。もし、これらの行為によって人を死傷させるような事故を起こしたときには、刑法に新たに新設された「危険運転致死傷罪」により、殺人や傷害に準じたきびしい罰則が科せられることになります(くわしくは「刑法・刑事訴訟法の改正」の記事参照)。
 なお、表1の罰則は、ドライバーだけではなく、それを命じた人や容認した人をも対象に、まったく同等の罰則が科せられることが定められています。「飲んだら乗るな」と同時に「乗るなら飲ませるな」も、当然守られねばなりません。

危険なドライバーには、運転をさせません

 罰則だけではなく、こうした危険な運転をするドライバーについては、点数制度をきびしくすることで、運転をさせない措置がとられることとなります。
 点数制度とは、交通違反の内容によって一定の点数を決め、その点数の合計が基準点数に達した場合に、運転免許を停止または取り消すという行政処分を行なう制度です。

表2 悪質・危険な運転に対する基礎点数
違  反  行  為基礎点数
酒酔い運転・麻薬等運転・共同危険行為等25点(15点)
無免許運転19点(12点)
酒気帯び運転(0.25mg/l以上)13点(6点)
酒気帯び運転(0.15〜0.25mg/l未満)6点(新設)
過労運転等13点(6点)
※(   )内の点数は旧規定

 悪質な運転についての基礎点数表2のとおり引き上げられるとともに、交通事故を起こしたとき及びひき逃げのときに加算される付加点数表3のとおり大幅に引き上げられました。

 これにより、死亡事故を起こした場合には、ドライバーは原則的に、即免許取消しとなります(たとえば安全運転義務違反2点+死亡事故による付加13点=15点)。また、酒気帯び運転で3ヶ月以上の重傷を負わせた場合も、即免許取消しです(酒気帯び最低6点+事故による付加9点=15点)。
表3 交通事故・ひき逃げの場合の付加点数
付加点数
ひき逃げ23点(10点)
死亡事故                  重過失
                        その他
20点(13点)
13点(9点)
傷害事故3ヶ月以上の重傷または   重過失
一定の後遺障害を伴う傷害 その他
13点(9点)
 9点(6点)
30日〜3ヶ月未満の傷害  重過失
                 その他
* 9点
  6点
15日〜30日未満の傷害  重過失
                 その他
* 6点
  4点
15日未満の傷害または   重過失
     建造物の損壊    その他
* 3点
  2点
※(   )内の点数は旧規定。ただし、*欄は旧規定も同じ。
 重過失は、専ら違反者の行為により事故が起こった場合をいう。
 傷害の日数は、もっとも被害が大きい負傷者の治療期間による。

 また、免許取消しに伴う欠格期間(免許の再取得が認められない期間)も、従来は最長3年でしたが、悪質なドライバーに対処するため、5年間の欠格期間を新設しました(表4参照)。たとえば、酒酔い運転で歩道などに突っ込んで死亡事故を起こした場合には、たとえそれまでに前歴がなくとも、即5年間の免許取消しとなります。
 さらに、過去1年間無事故・無違反のときには、点数制度上、それ以前の違反等をなかったものとして扱うという特例措置がとられますが、この1年という期間に、従来は免許停止等の期間も算入されていました。これを改め、運転が可能な期間が1年以上あり、その期間が無事故・無違反であることが必要と改められました。
表4 免許の取消し・停止処分の基準点数表
前歴免許の停止免許の取消し
欠格期間1年欠格期間2年欠格期間3年欠格期間5年
0回6〜14点15〜24点25〜34点35〜44点45点以上
1回4〜9点10〜19点20〜29点30〜39点40点以上
2回2〜4点5〜14点15〜24点25〜34点35点以上
3回以上2・3点4〜9点10〜19点20〜29点30点以上

*       *       *

車は便利で、私たちの生活には欠かせないものです。だからこそ、安全運転を心がけて交通事故を起こさないように気をつけましょう。




ホームページへカエル
「最近の法令改正」目次にもどる
次のページ(危険運転による死傷事故に新たな罪―刑法・刑事訴訟法の改正)に進む