法の理念に照らして明らかなように、育児休業・介護休業をとることで労働者に不利益があってはなりません。
しかし、これまで法文上は「解雇の制限」を記載するにとどまっていました。そこで、改めて、育児休業・介護休業の申請や取得を理由として「解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と明文化されました(法10・16条、H13・11・16施行)。
何をもって不利益な取扱いとするかについては、指針においてその具体例が次のように示されています。
- (1) 解雇すること
- (2) 退職または正社員からパートへなど、労働契約の変更を強要すること(労働者の表面上の同意の有無ではなく、その真意で判断される)
- (3) 自宅待機を命ずること(休業予定日を超えて休むように強要することも含む)
- (4) 降格させること
- (5) 減給したり、賞与等で不利益な算定を行うこと(休業期間中賃金を支払わないことや、賞与や退職金の算定の際に休業期間分を日割りで控除することは不利益に該当しない)
- (6) 不利益な配置変更をすること(たとえば、通常のルールで十分に説明できない異動を行うことで、相当の経済的・精神的不利益を生じさせること)
- (7) 就業環境を害すること(仕事をさせない、雑務につける等を含む)
男子も対象に時間外労働の制限
1ヶ月24時間、1年150時間まで
|
平成11年4月、労働基準法の女性労働者に対する各種の保護規定が、原則としてすべて廃止されました(以下、くわしくは「そよ風」98号参照)。
その際に、このうち、深夜労働の制限については、男女を問わず適用されるものとして、育児・介護休業法の中に新たに規定が加わりました(法新5章)。
[参考] 一般労働者の時間外労働の上限基準
期 間 |
限 度 時 間 |
1週間 |
15(14)時間 |
2週間 |
27(25)時間 |
4週間 |
43(40)時間 |
1ヶ月 |
45(42)時間 |
2ヶ月 |
81(75)時間 |
3ヶ月 |
120(110)時間 |
1年間 |
360(320)時間 |
但し、( )内は対象期間が3ヶ月を超える
1年単位の変形労働の場合 |
しかし時間外労働については、労働基準法において、その限度の基準を厚生労働大臣が定めることとしたほか(右の〔参考〕、36条2項)、同法に、18歳以上の一定の女子だけを対象に別枠をつくり、3年の期間を限って、さらにきびしい上限をもうけていました(附則133条)。この特別扱いが、平成14年3月末に期限切れとなります。
そこで、深夜労働と同様に、男女を問わず、育児・介護に携わる労働者について、時間外労働の制限を新たにもうけることとしました(法新4章)。
対象となるのは、小学校就学前の幼い子どもがいるか、または介護が必要な親族(配偶者・父母・子・義父母および同居し扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫)がいる労働者です。当該労働者が請求すれば、事業主は、1ヶ月につき24時間、1年につき150時間を超えて時間外労働をさせてはいけません。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は除外されます。もっとも、事業主は、単に必要というだけで拒むことはできず、通常考えられる相当の努力をすることが要求されます。
また、労働者のうち、(1)日雇労働者、(2)勤続1年未満の者、(3)1週間に2日以下のパート、(4)別途、子と同居している親が職についておらず(週2日以下のパートを含む)、養育ができる状態であり、産前産後でもない場合は、請求できません(規則31条の2、31条の3)。
従来から、1歳に満たない子どもを抱えていても、やはり働きたいという労働者のために、育児休業にかわる一定の労働時間短縮等の措置を事業主は講じることが義務づけられていました。今改正で、この範囲を3歳未満の子にまで広げました(法23条1項)。
事業主がとるべき措置は次のいずれかです(規則34条1項)。
- (a) 勤務時間の短縮
- (b) フレックス制の導入
- (c) 始業時刻・終業時刻の繰上げ・繰下げ
- (d) 時間外労働はさせない
- (e) 託児所の設置やこれに準ずる便宜の供与
また、育児休業の対象を3歳未満の子まで延長することも可能です。これらの措置は、いずれも、希望する労働者に適用されるものです。
ちなみに、小学校就学前の子どもの育児においても、同様の措置をとることは「努力規定」とされています(法24条1項)。
さらに、事業主が構ずべき措置の中に、新たに、子の看護のための休暇制度がもうけられました(法25条)。
小学校就学前の幼い子どもを育てる労働者が、子どものケガや病気で世話を必要とする際に、年次有給休暇とは別に、一定の休暇を与えるように事業主は努めなければなりません。指針では、子どもの病気のため休む日数は5日までが多いことを勘案するようにと、目処を盛り込みました。
また、労働者の異動で就業場所が変わる場合には、子の養育や家族の介護が困難とならないよう、その状況について配慮することが義務づけられました(法26条)。
これは、具体的に、異動しないとか、養育や介護の負担を軽減する措置をとるといったことまでを、事業主に求めているわけではありません。しかし、異動に際しては、その労働者の育児・介護の状況を把握し、本人の意向を斟酌し、就業場所が変わる際の代替手段の有無を確認することなどがあげられています(指針)。
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このほか、企業に1人、職業家庭両立推進者を選任することが、努力規定として盛り込まれました(法29条、H13・11・16施行)。


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