リストラ・賃金不払い・セクハラ・出向・・・・
個々の労働者と事業主のトラブルのすばやい解決をめざす
個別労使紛争処理法
平成13年10月1日スタート


増加する個別労使紛争長引く紛争の解決


 これまでも、労働問題に関する紛争は尽きることがありませんでした。
 その中でも、労働組合と会社との紛争(労働争議)であれば、労働委員会が間に入って斡旋・調停・仲裁をして解決する制度があります(労働関係調整法2〜4章)。国営企業や独立行政法人などで働く労働者にも、同様の制度が適用されます(国営企業等労働関係法6章、独立行政法人については「そよ風」109号ことば欄参照)。さらに、職場での、採用・昇進・定年・解雇などをめぐる男女差別のトラブルにも、機会均等調停委員会における調停の制度が整備されています(男女雇用機会均等法14〜19条、「そよ風」98号参照)。
 しかし、それ以外の個々の労働者個人が、労働トラブルにまきこまれたときには、解決のための特別な組織や制度はなく、結局、裁判所で訴訟を起こして決定してもらうという自力救済しかありませんでした。小額の金銭をめぐる争いなら少額訴訟制度を活用したり(「そよ風」90号参照)、また簡単な紛争なら簡易裁判所の民事調停で和解することも可能です。しかし、リストラをめぐる争いのような深刻なものになるとそうはいきません。
 たとえば解雇無効を争うなら、とりあえず地位保全の仮処分を申し立て、さらに本裁判で争う必要があります。これには、多くの年月と費用がかかります。また、紛争が解決した後も、人間関係の難しさから結局退職するというケースもみられました。
 そして、長引く不況の中で、全国の地裁に申し立てられた労働紛争の件数は2063件に達し、10年前の約3倍になっています。
 そこで、個々の労働者と事業主との労働条件などをめぐる争いを、すばやく円満にしかも無料で解決するサービスを提供するものとして、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」(個別労使紛争処理法)が制定され、平成13年10月1日から施行されました。

労働トラブルに助言・指導します!

 まず、もっとも簡便な紛争解決方法として、都道府県労働局長による助言・指導制度が創設されました(法4条)。
 労働トラブルの中には、法令や判例の理解が不十分であることが原因で起こるものも多数あります。そこで、都道府県労働局は、当事者の双方または一方から援助を求められた場合に、必要な助言・指導をすることができるようにしました。必要に応じ、労働問題の専門家で、しかも当該産業分野の実情にくわしい人から意見を聴くこともあります。
 都道府県労働局や労働基準監督署などでは、この10月から、総合労働相談コーナーが開設されています。労働問題のあらゆる分野についての相談を専門の相談員が受け付けています。困ったときには、是非ご活用ください。

必要とあればあっせんも行います!

 また、紛争当事者の間に入る第三者機関として、新たに「紛争調整委員会」が都道府県労働局に設置されました(法6条)。紛争当事者の双方または一方の申請によって、必要に応じて、この紛争調整委員会があっせんに乗り出すことになります。
 紛争調整委員は、学識経験者の中から厚生労働大臣によって任命されます。この委員が、当事者双方の主張を聞いてその要点を確かめ、必要があれば、参考人から意見を聞くなどして、事件の解決・調整にあたります。場合によっては、双方に具体的なあっせん案も提示します(法13条)。このあっせん案は、あくまで紛争を解決するための手助けであり、受諾を強制するものではありません
 あっせん手続きは、相手方が参加しなかったり、当事者が打切りを申し出たり、あっせん案が受諾されないなど紛争解決の見込みがないときには、途中で打ち切られることになります(規則12条)。この場合は、手続きは改めて裁判所に申し立てるほかありません。
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 なお、助言・指導あるいはあっせんを求めたことを理由に、その労働者を解雇したり、その他不利益な取扱いをすることは禁止されます(法4条1項・5条2項)。




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