開かれた行政へ
情報公開法平成13年4月1日スタート
何に??どう?? 賢く使おう! 情報の宝庫



 政治に国民の意見を反映させるために、行政の情報公開は欠かせないものといえましょう。
 すでに都道府県レベルでは、すべての自治体で情報公開条例が制定されています。市民がこれらを活用することによって、公費による官官接待やカラ出張の実態が明らかとなりました。また、公共事業の入札をめぐっても契約適正化法が制定されるなど、重要な改革の足がかりとなっています。

行政情報公開の
      統一ルールをつくる


 これまでも、個別の情報については、個々の法律などで公開のためのシステムが定められているものもありました。
 しかし政府には、主権者である国民に対して、行政上の諸活動の状況を具体的に明らかにする説明責任(アカウンタビリティー)があります。そこで、新たに「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)を制定し、行政のもつあらゆる情報について、公開するための統一的・基本的なルールを定めたものです。

国のすべての行政機関・あらゆる行政資料が対象


 何人も、情報公開を請求することができます。個人でも、法人でも、その他どんな団体でも構いませんし、その国籍も問いません。また、請求する理由も一切問われることなく、情報公開を請求することができます(3条)。
 対象となる機関は、国のすべての行政機関と会計検査院です(2条1項)。三権分立の観点から、国会・裁判所はのぞかれました。また地方自治体については、地方自治を尊重する立場から独自の条例にしたがうこととし、法の対象とはしませんでした。しかし、公安委員会や警察庁・防衛庁なども、特別扱いとして除外することなく、あらゆる行政機関を対象としたものです。
 対象となる情報も、行政機関が組織として保有するあらゆる情報が含まれます。個人的なメモなどはのぞきますが、まだ決裁前や途中の文書であっても法の対象です。
 情報の形態も問いません。文書や図画・写真・フィルムにとどまらず、電磁的記録を含めたため、フロッピーや録音テープ・コンピュータ内の情報もすべて公開の対象となりました(2条2項)。

個人・法人情報や国家秘密は非公開


 もっとも、行政のもっている情報の中には、公開されると個人のプライバシーが侵害されるなど、公開すべきでない情報もあります。そこで、次の6つが「不開示情報」とされています(5条)。

(1) 個人情報
 特定の個人が識別できるような情報。ただし、法令や慣行で公にされている場合は除く。
 また公務員については、「職」に関する情報は公開するが、「氏名」は不公開。ただし、中央省庁の課長クラス以上は公開。
(2) 法人情報
 法人・団体や個人事業者の事業についての情報のうち、その権利・競争上の地位などの正当な利益を害するおそれがある情報。また非公開を条件に任意に提供された情報で、通例公にしないもの。
(3) 国家秘密
 国防や外交関係を害するおそれがあると認める相当の理由がある情報。
(4) 公安情報
 犯罪の予防・捜査・刑の執行など、安全と秩序維持に支障が出るおそれがあると認める相当の理由がある情報。
(5) 意思形成過程情報
 内部で審議・検討・協議中の情報で、公開すると、率直な意見の交換が損なわれたり、不当に混乱や利益・不利益を及ぼすおそれがある情報。
(6) 行政執行情報
 監査・検査・取締り・試験、契約交渉、調査研究、人事管理など、その性質上、公開されると適正な遂行ができないおそれがある情報。

一部はダメでも残りは部分公開


 これらの情報についても、人の生命・健康・生活・財産を保護するため必要であったり、公益上必要と認められるときには、開示することができる旨が定められています(5条1・2項、7条)。
 また、一部に不開示情報が含まれている場合でも、請求のあった情報のすべてを公開しないのではなく、不開示部分だけを容易に取り除けるのなら、残りの部分について部分開示しなければなりません(6条)。たとえば、氏名など公開しない部分を黒く隠すなどした上で、情報を公開する措置がとられることとなります。
 反対に、国立病院のカルテなどのように、その文書があるかどうかを答えてしまうだけで、不開示情報(この場合は個人情報)を公開してしまうことになるケースでは、有無を明らかにしないで開示請求を拒否することもあります(8条)。

手数料は300円
       原則30日以内に決定


 手続きはシンプルです。開示請求書に、氏名(名称)・住所(居所)を記入し、開示してほしい行政文書等を特定できるように記載して、当該行政機関の長に提出するだけです(法人など団体の場合はその代表者の氏名も記入する。4条)。手数料は300円。申請は郵送でも構いません。
 この請求があった日から30日以内に、開示・不開示の決定がなされます。ただ、事務的に難しいなど正当な理由があったときには、さらに30日決定が延長されることもあります。また、請求があった文書が膨大なものであるため、60日以内にすべて決定をすることはとても無理な場合には、相当の部分について期間内に決定をしておいて、残りについては追って決定をすることも認められています(10・11条)。

実費金額をみて開示方法を選択


 開示が決定すれば、その通知書に、当該情報の公開方法として可能なものがすべて記載されます。閲覧や視聴、写しの交付(コピー、フィルムなどのプリント、録音テープ・ビデオテープ・フロッピー・光ディスクなどに複写等々)など、各方法ごとに必要となる金額も明記して通知されますので、どの手段にするかを選んで、該当の金額を納付することになります(16条)。主な手数料は右図のとおりです。もっとも、申請の際に300円を納付しますので、開示の際に納付する金額は、これから300円を引いた金額となります。

不開示には不服申立か取消訴訟


 もし、全部不開示や部分的に不開示の決定がされるなら、当然、その理由が通知されます。そしてこの決定に不服があれば、行政不服審査法に基づいて当該行政機関の長に不服申立てを行うか、訴訟で取消しを求めることになります。
 行政機関の長は、不服申立てがなされた場合には、「情報公開審査会」に諮問し、その答申を受けて裁決を下します(18条)。情報公開審査会は、情報公開が迅速に統一的に行われるようにつくられた、全国で唯一の組織です。内閣府に置かれ、強い権限をもって調査・審査することが保証されています(21〜35条)。
 一方、不開示等の決定に不満があり、その取消しを求めて訴訟をする場合には、当該行政庁の所在地のある裁判所だけではなく、特別の措置として、取消しを求めて訴える原告の住所地を管轄する高等裁判所が置かれる地域の地方裁判所(全国で8ヶ所)でも訴訟が提起できることとされました(36条)。

総合案内所を活用して
        的確な情報の検索を


 この情報公開法は、法律が制定されてから平成13年4月に施行されるまで、実に2年の歳月をかけて準備が進められてきました。国の行政機関が保有する情報は、職員1人当たりA4判の紙にして26万枚にも達するといわれています。
 また、実際に情報の開示を請求したいと思っても、どこにどんな文書や情報があるのかを探し出すのは、一般の国民にとって至難の業といえましょう。
 そこで、これらの文書を統一的に管理できるように作業が進められ、総務省のホームページの中で、ほしい文書を検索して捜し出すことができるようになりました。また、全国にも、都道府県に各1つの情報公開総合案内所が設けられ、開示請求のための相談にのってもらえるほか、各省庁でも、情報公開の窓口を設けています(37・38条)。
 このほか、行政機関のもつ情報を積極的に公開するための制度として、文書閲覧制度があります(40条)。各行政機関が、本庁やブロック・府県単位の機関で、閲覧できる文書の目録を備えて応対してくれるものです。ここでは、その場ですでに閲覧でき、手数料もいりません。
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 なお、情報公開法では、(1)官報・新聞・雑誌などの出版物、(2)博物館や図書館で別途に管理公開されている歴史的・文化的・学術的な資料、(3)登記・特許・刑事記録など別途の法律で公開の制度が体系的に整備されているものは、法の対象から除かれています。



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