<その後,2度にわたり大きな改正が行われました。(くわしくはそよ風133号・162号参照)>
内職・モニター商法にも対応
「訪問販売法」改め特定商取引法
平成13年6月1日スタート

高収入にだまされて……内職・モニター商法にも法の規制
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「手軽な在宅ワークで月額△万円以上の副収入を」「宅配便独立開業募集、月収××万円確実」などと呼びかけ、結局、高額な専用ワープロやパソコン、あるいは軽トラックなどを購入させられたものの、十分な仕事の紹介や斡旋(あっせん)はなく、代金等の支払いだけが残った──これが、いわゆる内職・モニター商法です。長引く不況と雇用不安の中で、少しでも家計の足しにと考える主婦やサイドビジネスで副収入を得ようとする人、あるいは独立の夢をねらった悪徳商法で、近年、社会問題となっています。国民生活センターに寄せられた苦情・相談件数も、平成11年度には1万7000件を越えました。
この内職・モニター商法は、仕事のために商品等を購入するという特徴があるので、「訪問販売法」や「消費者契約法」が守ろうとする純粋な消費者ではないとして、その適用が受けられない可能性がありました。
そこで今回、「訪問販売法」を改正し、こうした内職・モニター商法も規制の対象とすることで、クーリングオフ制度などが適用できるようにしました。
対象となるのは、商品販売やサービスを提供する(あるいは斡旋する)事業のうち、“当該商品やサービスを利用する仕事をこちらで斡旋・紹介するので利益が得られる”ということを誘い文句にして勧誘し、有料の契約をとりつける商法です(業務提供誘引取引、法51条)。
訪問販売や通信販売などでは、施行令で具体的に指定された商品やサービスだけが規制され、車など指定されていないものについては法は適用されません。<平成21年12月1日から,訪問販売等についても商品・役務の「指定制」が廃止され,原則すべての商品・サービスが対象となった。(そよ風162号参照)>しかし、この業務提供誘因取引においては、取引形態が右の条件に合致するなら、あらゆる商品・サービスが対象となります。
こうした取引の広告に際しては、とくに、負担額は総額を書くことを、また仕事を斡旋すると広告するなら、その仕事の内容や斡旋の頻度・報酬の条件を、さらに高収入・☆万円は確実などと広告するときは、その根拠と証拠までも記載するように求めました。もちろん、誇大広告も禁止です(法53・54条、規則41・42条)。
クーリングオフの期間は、マルチ商法と同じく、契約内容が書かれた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、自由に解除することができます(法58条)。<さらに、平成16年11月11日からは、クーリングオフを妨害する行為があったときは、たとえ20日間がすぎていてもいつでもクーリングオフできるなど、契約の解除・取消しが大幅に広げられました(くわしくはそよ風133号参照)>
また訪問販売等と同様に、契約前には取引の概要を記した書面を、さらに、契約後にはくわしい書面の交付が義務づけられました(法55条)。この中には、商品の種類・性能、仕事の斡旋等の条件、顧客が負う負担、契約解除などについて記載されます。これに違反した事業者は、6ヶ月以下の懲役か100万円以下の罰金、またはその両方が課せられます(法71条)。もちろん、契約時や解約時に、顧客の判断に影響するような重要な点を言わない、あるいは嘘をつく、または威迫することも厳しく禁止されました(法52条。2年<平成21年12月からは”3年”>以下の懲役か300万円以下の罰金または併科、法70条1号)。
こうした規定に違反したり、あるいは(1)契約解除等になかなか応じない、(2)確実に儲かると断定して勧誘する、(3)嫌だというのに無理やり勧誘したり契約解除を妨げる、(4)未成年者や高齢者等の判断力の不足に乗じる、(5)相手の知識・経験・財産からみて不適当な勧誘をする、(6)年齢・職業等を偽って契約させるなど、消費者の利益が害されるおそれのあるときは、必要な指示を出したり業務停止を命ずることもあります(法56・57条、規則46条)。
マルチ商法(連鎖販売取引)は、これまで、販売等の組織に入るときに支払う金品が2万円以上の取引しか規制していませんでした(「そよ風」84号参照)。すると、入会時には2万円未満を支払わせ、入会後に多額の商品を購入させるというケースが続発し、被害を大きくしていました。
そこで、この2万円という入会時の負担額の下限を撤廃し、契約時に何らかの金銭的負担が伴うなら規制の対象にできるようにしました(法33条)。
また、マルチ商法の広告への規制も強め、広告の中に「利益が得られる」と書くときには、その根拠・計算方法まで明記するなどと義務づけられました(法35・36条)。

通信販売には、クーリングオフの制度は、法的に定められていません。しかし、インターネット通販が近年急速に拡大し、これに伴い、申し込んだ覚えもないのにいつの間にか手続きをしたことになっていたなどというトラブルが増えています。これは、インターネットの画面上の説明不足が原因のものも多く、次のような場合は、顧客の意に反して契約の申込みをさせる行為として表示の改善などを指示できることになりました(法14条、規則16条)。
(a) どの操作をすれば契約の申込みとなるかがすぐわかるように表示されていない。
(b) 申込みの操作内容を、もう一度確認し、簡単に訂正できるようにしていない。
このほか、消費者トラブルで増加しているケースを考慮して、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の対象として指定する商品・サービスを、下表のとおり追加しました。<平成21年12月1日からは,商品・サービスの指定制が廃止され,原則,すべての商品・サービスが対象となりました。(くわしくはそよ風162号参照)>
表 訪問販売等で平成13年6月1日より新たに追加指定されたのは…
サービス(令別表3)
☆ 排水管の清掃
☆ 易断を行うこと
☆ 演劇・音楽・スポーツ・芸術品などの鑑賞・観覧
☆ プログラムをコンピュータに記録する
☆ 人名録等の氏名・経歴などの情報を抹消・訂正等 |
権 利(令別表2)
○ 映画・演劇・音楽・スポーツ・芸術品などを鑑賞・観覧する権利 |
※商品・サービス・権利は、このほかに多数指定されています。 あきらめる前にお確かめください。 |
* * *
なお、今改正は、平成13年6月1日以降に結ばれた契約に適用されます。
また、今回新たに内職・モニター商法が法律に盛り込まれたため、従来の「訪問販売法」は、(1)訪問販売、(2)通信販売、(3)電話勧誘販売、(4)連鎖販売取引(マルチ商法)、(5)特定継続的役務(「そよ風」102号参照)、(6)業務提供誘因取引という、実に6種類の特殊な取引を規制する法律となりました。そこで、名称を改め「特定商取引に関する法律」と改名されました。消費者保護のための大切な法律です。今後ともよろしく。


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