覚悟を決めて…ライフスタイルの変換を!
環境にやさしい循環型社会をめざす
「生かせば資源、捨てればゴミ」徹底した分別を

昨年(2000年)来、ごみ・リサイクル問題についての数多くの法律が制定あるいは改正されました。2001年4月からいよいよ本格的にスタートした家電リサイクル法もその一つです。
では、これらの法律の中から主なものをとりあげてみましょう。
すでに「環境基本法」においても、循環型社会は提唱されているところです(「そよ風」70号参照)。
さらに、今回新たに、「循環型社会形成推進基本法」(平成12年6月20日施行)が制定され、大量消費・大量廃棄の時代に変わって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷を減らす社会としての「循環型社会」の基本イメージとその原則が提唱されました。
“廃棄物=無価値なごみ=衛生的に処理する”という従来の発想ではなく、ごみをも有用な「資源」としてとらえなおし、この資源をできるだけ循環的に利用することが求められます。
とくに、ごみやリサイクルについての優先順位が明確に示されました。

- (1) 発生抑制(Reduce )
- まずは、ごみを出さない。ムダなく効率よく生産し、長期間使用する。
- (2) 再使用(Reuse)
- 不要な物は活用する人に回す。廃品の部品もそのまま使えるものは製品に再度使用する。
- (3) 再生利用(Recycle)
- 再使用できない部分はできるだけ加工再生して次の製品へとリサイクルする。
- (4) 熱回収
- それもダメなら焼却等により、せめて熱エネルギーとして活用する。
- (5) 適正処分
- それでも残った部分についてのみ、やむを得ず安全・適切に処分する。
もっとも、これら(1)〜(5)は、あくまで環境に負荷をかけないことを基準に定められたものですから、リサイクルや焼却によって有害物質が出るなどかえって負荷が増えるケースなら、この順位を入れ代えるべきなのはもちろんです。
本法の中では、とくに生産者には広い責任があることが明記されました。つまり、生産者は、生産の段階だけに責任をもつのではなく、その製品が使用され、廃棄された後においても、これをリサイクル・処分することに一定の責任を負うという考え方です(拡大生産者責任)。たとえば、排出抑制のために、耐久性のある商品を作り、修理体制も整える。再処理等しやすいように設計を工夫したり(材質を限定・分解容易な構造等)、材質や成分の表示を個々に行う。また、場合によっては、直接回収したりリサイクルをも行うといったことが必要となります。
もちろん、消費者にも、排出者としての責任があります。物は大切に長期間使用し、分別回収に協力し、再生品の使用にも努めることが盛り込まれました。
環境大臣は、これを推進するための「循環型社会形成推進基本計画」を作成し(5年ごと)、重点的な施策などを具体的な目標値を設定して取り組むことになります。
こうした基本原則の上に、製品分野ごとに、必要に応じて個別に、その分野の実情にあった法律を定めて規制することとなります。
そのトップバッターとして平成9年にスタートしたのが「容器包装リサイクル法」でした(くわしくは「そよ風」79号参照。完全施行は2000年4月)。
そして、この2001年4月からは、「家電リサイクル法」(特定家庭用機器再商品化法)もいよいよスタートしました。
家電製品は、技術的なノウハウについては、すでにリサイクルが十分可能であったにもかかわらず、そのほとんどが埋立処分され、リサイクルは進んでいませんでした。
今回、法の対象とされたのは、テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコンの4種類で、廃棄される家電製品の約8割(重量)に当たります。これら4種類の家電製品については、製造業者・小売業者・消費者に、それぞれリサイクルのための義務が課されます。
まず製造業者(輸入業者)には、自ら製造(輸入)した製品を引き取って、フロンガスなど有害物質を処理した上で、一定の基準にしたがってリサイクルを行うことが義務づけられました。
そして小売業者には、1)過去に自らが売った製品、あるいは、2)新商品を売った際に廃棄されることになった製品を、消費者の依頼に応じて回収し、各製造業者に引き渡す義務が課せられました。
消費者は、廃棄する家電を、小売業者などを通じて、あるいは直接製造業者に、適切に引き渡す義務があります。また、その際の、回収費用とリサイクルに必要な費用は、いずれも、排出する消費者が負担することになりました。
消費者が、小売業者などに料金を支払って家電製品を引き渡すと、リサイクル券が発行されます。この券に基づいて、当該製品がきちんと最後までリサイクルされたかどうかチェックできる仕組みとなっています。
| リサイクル料 | 収集運搬料 | 再利用率 |
テレビ 冷蔵庫 洗濯機 エアコン |
2700円 4600円 2400円 3500円 |
概ね 500円〜 3000円 |
55% 50% 50% 60% |
---|
一般廃棄物の3割を占めているのが、食品の廃棄物です。食品製造業段階では、半数程度が飼料等として再利用されていますが、流通段階や飲食店・一般家庭から排出されるものは1%未満しか再生利用されておらず、リサイクルが立ち遅れている大きな分野といえます。
「食品リサイクル法」(食品循環自然の再生利用等の促進に関する法律)では、こうした製造加工時の調理くずや期限切れ商品・食べ残しについての対策が定められました(平成13年5月1日施行)。
もっとも、リサイクル用の品質の確保がきわめてむずかしいとの判断から、今回は、一般家庭から出る食品廃棄物については除外されました。その一方、食品関連事業者(食品製造業・卸売や小売などの食品流通業・飲食店・旅館・ホテル・結婚式場等々)には、その大小を問わず、すべてに取組みが義務づけられました。
とくに、食品という特殊性に考慮して、肥料・飼料への再生という本来のリサイクルだけではなく、メタンガスの利用や油脂製品への転用などでも活用する道が盛り込まれています。さらに、発生を抑制する(ムダをなくす)ためには、製造工程や流通段階で廃棄する部分をいかに減らすかが大きな問題です。また、乾燥・脱水などによっても、食品廃棄物の量は大幅に減らすことができます。こうして、5年間で2割の削減が目標です。
大量に(年間100トン以上)食品廃棄物を出す事業者については、勧告・社名公表・命令・罰金等の措置もとられることになります。反対に、適切な再生利用事業者や事業計画については、登録や認定制度を設けて、一層の利用が進むように考慮されています。
「建設リサイクル法」(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)では、建築物の解体工事や建設工事から出る廃棄物の規制を行います。
近年、建設廃棄物は、ミンチ解体により、分別処理もせずに何もかも一緒に解体することが頻繁に行われています。これでは埋立処分するしかなく、こうした建設ゴミは、産業廃棄物の最終処分量の約4割をも占め、さらには、不法投棄の9割を占めるなど、深刻な問題となっていました。
そこで、まず、解体工事業者を都道府県知事の登録制としました(平成13年5月1日施行)。
さらに、一定規模以上の解体工事あるいは新築工事については、分別解体が義務づけられることとなります(2002年春には施行予定)。分別の対象となるのは、(1)コンクリート、(2)コンクリートと鉄からなる資材、(3)木材、(4)アスファルト・コンクリートの4種類です。
分別解体の義務は、工事を受注する元請業者が基本的に負うことになります。しかし、発注者も、当該工事着手の7日前までに分別解体の計画を都道府県知事に届け出る義務があり、適正な工事が行われるよう協力する必要があります。
なお、さらに次のリサイクルの重点製品として、現在「車」についてのリサイクル新法が準備されています。
こうした個別分野におけるリサイクル等のための法律とは別に、再生資源を利用した商品など環境にやさしい製品を積極的に使用することを促すために「グリーン購入法」(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)も制定されました(平成13年4月1日全面施行)。
これは、まず、公益を実現するため、経済的にも大きな購買力をもつ「国」が率先して、再生品など環境への負荷が少ない商品やサービスを使うようにしようというものです。しかも、政府や各省庁だけでなく、国会や裁判所、独立行政法人などもすべて含めて、国のあらゆる機関が取り組むことになります。
国が基本方針を定め、これに基づいて、各組織ごとに毎年度調達方針が作成されます。そして、たとえば、再生コピー用紙や低公害車、低電力型のコピー機など、重点的なものには採用するための具体的な基準や、目標の数値が定められてその達成をめざします。
なお、地方自治体については、国で統一的なことは定めず、地方分権を生かし、それぞれ独自に、環境物品の調達の推進をはかるよう努力することとなりました。
また、一般消費者にも、再生商品などの利用を広めるためには、的確な情報を提供することが何より重要です。そこで、エコマークやグリーンマークといった環境ラベルを活用することなどの措置が盛り込まれました。
これまで、ごみの再生利用の進めるために主として活用されていた「リサイクル法」(平成3年制定。「そよ風」59号参照)も、今回の循環型社会の考え方に即して、単なるリサイクルから、排出抑制や再利用も含んで、いかに環境負荷を減らすのかという視点から、大きく改正され、名称も「資源の有効な利用の促進に関する法律」(資源有効利用促進法)と改められました(平成13年4月1日施行)。この改正法によって、来年中には、家庭用パソコンの回収も義務づけられる見込みです。
また、「廃棄物処理法」(廃棄物の処理及び清掃に関する法律。「そよ風」96号参照)等も改正され、マニフェストシステム(産業廃棄物管理票制度)の徹底や廃棄物処理施設の整備のための対策が取り組まれています。さらに、原則として、「何人も廃棄物を焼却してはならない」ことが盛り込まれ、これに違反すれば直接罰則が科せられることとなりました(平成13年4月1日全面施行)。
* * *
リサイクルのトップバッターとなった容器リサイクル法については、もっとも労力と費用のかかる回収・保管を自治体が受け持つこととなったため、生産者に歯止めがかかるどころかかえってペットボトルが大量に氾濫して、リサイクルは一向に進まないという強い批判があります。
また、EU(欧州連合)が取り組もうとしている家電リサイクル法は、電気かみそりや玩具といった小さな物も含めて、すべての家電・電子製品に回収を義務づけるものとなっています。しかも、回収費用なども原則としてすべて生産業者の負担となり、再利用率も60〜85%ときびしい基準となる見込みです。
循環型社会は、「構想」から「現実」へと向かうため、一層の真摯な努力が、まさにこれから必要とされています。


ホームページへカエル
「最近の法令改正」目次にもどる
次のページ(訪問販売法改め「特定商取引法」スタート)に進む