政治なんて変わらない!?
イエ、変えるためのシステムができました!

中央省庁等大改革
中央省庁改革関連17法 平成13年1月6日施行



 年明け早々、中央省庁の再編が実施されました。大蔵省が財務省に変わるなど、耳新しい名前になっても、どうせ政治はそんなに変わらないさと、無関心を決め込んではおられませんか。
 ところが、この改革は、ただの省庁の組織替えにとどまらず、これまでの行政システムそのものを根底から変えようとするものです。あなた任せの行政からの脱却が、今、問われています。
 従来の行政組織が作られて50年余の間に、時代は大きく変わりました。しかし行政システムは、必要に応じて付け加えられるばかりで、大きな見直しもないまま肥大化・硬直化してしまい、その弊害が問題となってきました。そこで、本格的な行政改革が、いよいよ断行されたものです。

官僚任せでなく
政治が行政をリードする

 今回の中央省庁の再編の第一の目的は、何より、政治がリーダーシップを取り戻すシステムを作ることです。
 政治家の本来の使命は、国や国民の行く先を大局的に判断し、あるいは情勢に機敏に対応する舵取りにあるでしょう。しかし、政治家の多くはこれを怠り、地元の利益や自らの利権に走り、派閥や政権抗争に明け暮れています。そしてその間、実際の行政は、強大な官僚組織が動かしてきました。しかし、政治のリーダーシップなしに、実務家である官僚が実権を握っている状態では、新たな時代に対応しきれず、金ばかりかかって実のない行政に陥っています。
 そこで、本来の、政治が行政をリードするという当たり前のことができる体制を確保することとしました。

内閣総理大臣のリーダーシップと内閣府の新設

 従来は、行政組織の下から意見が積み上げられて、トップはそれを調整しまとめるという消極的な役割しか果たさないことが往々にしてありました。たとえば国家予算にしても、大蔵省で積み上げた予算原案をもとに、与党や各省と調整しながら、内閣は予算案を作成していました。これに対してこれからのシステムは、トップが大きな方向を打ち出し、行政各組織がそれを現実化していくこととなります。
 そのため、内閣総理大臣がリーダーシップを発揮できるように、組織や制度を改めました。まず、内閣総理大臣を直接補佐する「内閣官房」を充実させ、さらに新たに総理大臣を長とする「内閣府」を設置して、ここで国の重要政策が企画・立案できるように整備しました。
 「内閣官房」は、単に政治的な調整を行うだけでなく、重要政策について基本的な方針を企画・立案することが明記されました。また、行政全般のあらゆる政策について、最終的な調整を行う場となります(「内閣法」の一部改正)。
 そして総理大臣と内閣官房を支える支援組織として、他の省より一段高い立場に、「内閣府」が新設されました(「内閣府設置法」の制定)。ここでは、特定の重要政策について企画・立案し、あるいは総合調整することとなります。内閣府は内閣の「知恵の場」と位置づけられ、重要政策に関して四つの会議が設けられました(1)経済財政諮問会議、2)総合科学技術会議、3)中央防災会議、4)男女共同参画会議)。また、外局として国家公安委員会・防衛庁・金融庁が置かれます。
 内閣官房・内閣府のいずれも、政策の決定に政治が主導権を発揮できるように、特命担当大臣・副長官・副長官補・副大臣等々と新たなポストが作られ、多数の政治家が配置されています。

10省の編成は 任務別で大くくりに

 内閣・内閣官房・内閣府を中心に、これを支えて、さらに政策を具体化していく組織として、10の省が配置されました。
 従来は、総理府と22の省庁が置かれていましたが、これは行政の対象と手段で組織を分けていたものです。各省庁の縄張り意識も強く、「タテ割り行政」として強い批判がありました。今回はこれを改め、何をめざすかの任務別に大きな範疇で組織をくくることにしました(下図参照)。
 また、各省庁間で協力して政策を実現していけるように、政策調整の仕組みも新たに規定しています。
 このほか、国家行政組織法が改正され、内閣官房や内閣府と同様に、多数の政治家が省庁に入ることになります。従来は、各省庁のトップたる大臣と政務次官だけが政治家で(しかも内閣改造で頻繁に入れ替わる)、事実上の実権は官僚のトップである事務次官が握っているといわれました。改正法では、大臣を補佐すべく、副大臣・大臣政務官という新たな役職が設けられ、2〜5人の政治家や専門家が各大臣を助けて政策を進める体制が整えられました。

めざせ! スリムでムダのない行政

 今回の省庁改革では、さらに、行政のスリム化が目指されています。
 肥大化した行政組織を見直し、民間に移せるものはできるだけ民間に任せ、他方、地方分権を推し進めて、中央組織をできるだけ柔軟で身軽なものとすることが目標です。すでに、郵便事業(現業職員約30万人)は、平成15年に郵政公社に移行することが決定されています。
 さらに今改正で、60の「独立行政法人」が設立されました。これは、従来、省庁のもとに設置されていた政策の実施を担当する多くの事務・機関をまとめ、国の組織から独立した法人とするものです。財務省造幣局や印刷局も平成15年に、国立病院・療養所については平成16年に、やはり独立行政法人に移行する予定です(独立行政法人」についてはことば欄参照)。
 こうした見直し作業を進めることで、国の行政機関は、この10年間に、郵政現業職員を除き、さらに25%の人員削減を目指すこととなります。
また、乱立していた審議会についても、半数以下に大幅に削減されました。政策の決定を審議会に委ねることなく、これからは、内閣・国務大臣の責任で行うことが明確にされたものです。

政策のたれ流しはダメ! 評価し、見直す!

 一旦、計画を決めたものの、現実に合わないため実行できず、5年も10年も塩漬け状態で放置する。あるいは、一旦、机上で計画を定めたというだけの理由で、状況が大きく変化しその計画が無意味となっても、多額の予算を費やして計画を進める等々……一般社会では考えられないようなことが、お役所仕事=非効率として、まかりとおってきました。
 こうした悪弊を改めて、その政策の効果を事前・事後を問わず不断に評価し、それをさらに新たな政策に反映させるシステムの導入がはかられました(政策評価制度)。
 各府省庁では、自ら行う政策について、必要性・効率性・有効性・公平性・優先性などを総合的に評価し、企画立案あるいは見直しに活用します。さらに、総務省の中に行政評価局が置かれ、ここで各府省庁の政策について、別途、統一的・総合的に評価し、内閣総理大臣に意見を具申、当該省庁に勧告を行うという、二段構えの評価がなされることとなります。また、評価の中立性・公正性を確保するため、総務省に、民間有識者で構成する政策評価・独立行政法人評価委員会が設置されます。
 そして、いずれの評価についても、その過程・結果は、インターネットを活用するなどして、広く国民に公表され、国民からの意見・要望を受け付けます。こうして、行政は、その政策を国民に説明しながら、効率的で、実質的に成果をあげることを目指すことになりました。

*       *       *

 今回の中央省庁等の改革により、行政は、大きく生まれ変わるためのシステムを与えられました。しかし、これをほんとうに生かすことができるかどうか、それは国民にかかっています。
 国民はそれにふさわしい政府をもつといいます。この1月6日に発足した新体制も、1ヶ月もたたない間に、経済財政政策担当大臣という重要ポストの閣僚が不祥事のため辞任するという有様です。
 地元の利権だけにとらわれない、すぐれたリーダーシップを発揮できる政治家を、国民は選ぶことができるのか──政策評価制度を活用して、政府が公表する評価過程・結果をチェックし、積極的に意見を寄せることができるのか──あなた任せの政治を脱し、自立した国民として関心を寄せずにはいられません。




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