つきまといストーカー
行政罰(警告・禁止命令)刑事罰(懲役・罰金)で対応
ストーカー規制法 平成12年11月24日スタート


エスカレートする前にストーカーを規制


 無言電話に悩まされる、交際を断った相手にしつこくつきまとわれる、誰かに見張られているような気がする……程度の差はあれ、身近な人にも起こりそうなこんな事態も、極端にエスカレートして、ついには傷害・殺人事件になる例が多発しています。警察へ「つきまとい」について相談した数は増えつづけ、昨年(1999年)8000件を超えました。
 こうした行為も、脅迫や傷害・器物損壊などといった、実際の被害が出た段階では、刑法によって取り締まることが可能です。しかし、それ以前の状態を取り締まる法律は、「不安・迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとう行為」として、軽犯罪法で拘留(1日〜30日)または科料(1000円〜1万円)が科せられるにすぎません(同法1条28号)。
 被害者にとっては深刻な状況であっても、警察は十分な相談にものらず、民事不介入を盾に事件が起こるまで放置され、結局、取り返しのつかない事態となることに、強い批判がありました。
 そこで、エスカレートするまでの段階で実質的な取締りができるよう、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」が制定され、本年11月24日より施行されました。

規制は、恋愛やあこがれ・満たされぬ恨みに限定

 本法の対象となるのは、恋愛やあこがれといった好意の感情から、あるいはこうした好意の感情が満たされない恨みからなされる行為にのみ、限られます。
 マスコミの取材活動や宗教等の勧誘活動、あるいは日常的に行われている営業活動など、たとえ執拗な面があったとしても、本法の対象とはなりません。いわゆるストーカー犯罪の多くが、一方的に交際を求めたり、復縁を迫るためになされています。
 さて、いわゆる“ストーカー”といわれる行為を、この法律では「つきまとい等」と「ストーカー行為」の2種類に分類し、前者については行政処分(警告・禁止命令等)で対処し、後者についてはきびしく刑事罰が課せることとしました。また、被害者の意向を重視し、たとえ「ストーカー行為」でも、行政処分か刑事罰かを選択できるしくみとなっています。

つきまといをしつこく反復→→ストーカー行為

 「つきまとい等」としては、次の8つの行為が規制されます(法2条1項)。

 しかもこれは、相手方本人に対してだけでなく、その家族や教師・同僚・上司などに対する行為も含まれます。また手段も、口頭や電話・FAX・郵便・電子メールなど、一切問わず禁止されます。
 何人といえど、これら(1)〜(8)の行為つきまとい等)をして、相手の身体・住居・名誉を害したり、相手を不安に陥れてその行動の自由をひどく害することは禁止されます(3条)。
 そして、このつきまとい等を繰り返し行う行為が、「ストーカー行為」となります(法2条2項)。ただし、(1)〜(4)については、身体・住居・名誉を害したり著しい不安を感じさせる方法でなされた場合に限られます。さらに、同一の人に対して、右の同一番号の行為を何度も繰り返した場合がストーカー行為であり、いくつかの行為を一度ずつ重ねてもストーカー行為とはいえないと解されます。

被害者からの文書による申出・告訴が必要

 「ストーカー行為」については、被害者が文書で告訴すれば、公判が開かれ、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(13条)。
 一方、「つきまとい等」については、被害者が住所地の警察に書面で届け出れば、警察本部長や警察署長の名で、まず「警告」がなされ、それでも繰り返すようなら、本人から聴聞を行ったうえで、公安委員会が「禁止命令」を出せることとなります(4・5条)。また、被害者保護のため緊急の必要が認められれば、最初の段階で、「仮の命令」(15日間有効)を出すことも可能です(6条)。この場合には、15日以内に公安委員会が本人から意見の聴取を行います。
 また被害者の意向で、たとえストーカー行為に該当するものでも、この行政措置をとってもらうことも、もちろん可能です。
 もし、「禁止命令」をも無視してストーカー行為を続けるなら、加罰規定により、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。たとえストーカー行為とまではいえない場合でも、刑事罰の対象となり、50万円以下の罰金となります(14条)。

被害者には警察から援助の手が

 被害者は日常的に不安な状態にさらされています。警察では被害を防止するために、被害者からの申し出があれば、次のような援助をすることとなりました(法7条・規則9条)。

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 今回の法律では、対象は恋愛感情等に限定されたため、民事上のトラブルからストーカーに悩まされている人びとは保護の外となりました。地方自治体ではこれを救うために、すでに迷惑禁止条例などでこうした行為の規制に乗り出しています。
 本法は、施行後5年でさらに検討することが盛り込まれました(附則4)。




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