外国人登録法改正
半世紀を経て……

指紋押なつは全廃されました

平成12年4月1日スタート


 「外国人登録法」が一部改正され、多年、外国人の人権を侵害するものとして批判の強かった指紋押なつ制度が、ようやく全面的に廃止されました。
 主な改正点は次のとおりです(平成12年4月1日より施行中)。

(1)指紋押なつ制度の廃止
 すでに平成4年に、永住者・特別永住者(いわゆる在日韓国・朝鮮人及び台湾出身者及びその子孫)については、指紋押なつは廃止されています(そよ風63号参照)。
 今回の改正で、永住者等以外の外国人についても、すべて、指紋押なつ制度は廃止されました。以後、本人であることの同一人性確認の手段は、署名と家族事項の登録で行うこととなります。
 これに伴い、手持ちの外国人登録証に指紋が記載されているときは、切替交付の時期がまだでも、署名・家族事項の登録をして、すぐに新しい登録証をもらうことができる措置をとっています。
(2)登録原票開示規定の新設
 登録原票は原則非公開であり、これまでは、開示についての規定は設けず、運用として、本人が身分を証明する必要があるときなどにその写や原票の記載事項を証明する登録済証明書を発行してきました。
 今回は新たに開示についての規定を設け、本人・代理人・同居の親族・国の機関または地方公共団体(法的事務のため必要があるときに限る)は、登録原票の写または記載事項証明書の交付を申請できることとし、さらに弁護士と日本赤十字社など一定の公的法人については、その必要がある場合に限り、必要な範囲で記載事項証明書を請求できることとしました。
なお、不正なことをして、登録原票の写や記載事項証明書の交付を受けた者は、5万円以下の過料に処せられます(戸籍謄本・住民票と同様)。
(3)永住者・特別永住者の登録事項の一部削減
 永住者や特別永住者は、日本への定着性が高く、居住・身分関係を把握するのに必要はないとの判断で、登録事項のうち、「職業」と「勤務所又は事務所の名称及び所在地」の登録は不要としました。
(4)永住者・特別永住者の登録切替期間の伸長
 外国人登録法では、16歳以上の外国人は、原則として5年ごとに確認(登録証明書の切替交付)申請をしなければなりません。
 永住者・特別永住者については、登録事項の変更も少ないので、負担軽減のため、この切替期間を7年に延長することにしました。
(5)同居親族による代理申請の緩和
 これまで各種申請は、外国人本人が自ら市町村の窓口に出向くのが原則でした(16歳未満または身体の故障で自ら申請できない場合のみ、代理申請を認める)。
 今改正で、代理申請の枠を広げ、新たな登録証明書の交付を伴わないような登録の変更申請の場合には、同居の親族が代理できることとしました。また、登録証明書の受領は、同居の親族が簡単に行えることとなりました。
(6)外国人登録証の常時携帯義務違反への罰則引下げ
 指紋押なつと並んで、国際的にも批判の的となっているのが、外国人登録証の常時携帯義務です。
 今回の改正でも残念ながらこの規定は残されましたが、特別永住者に対する罰則規定が軽減されました。従来は、外国人登録証を常時携帯しない場合、「20万円以下の罰金」という刑事罰が科されていましたが(乱用にならないよう弾力的に運用する、衆議院法務委員会附帯決議)、特別永住者に限り、「10万円以下の過料」という行政罰に改められました。刑事罰から行政罰への移行によって、不携帯を理由にその場で逮捕されないことが法的にも認められたものです。

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 思えばこの20年、外国人登録の正確性と人権の尊重のバランスをとりながら、少しずつ、後者へ比重を移してきたといえます。そよ風誌でも、指紋押なつ制度(昭和60年8月)、登録証携帯義務(昭和61年6月)を取り上げ、その後の法改正の歩みを丹念に追ってきました。
 外国人登録法の大きな課題が一段落したいま、これからの問題として浮上するのは、帰化条件の緩和・国籍における出生地主義の併用など、日本人であることへの選択肢をどこまで広げるかの問題ではないかと思われます。




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