<民事法律扶助法は,総合法律支援法が制定され「法テラス(日本司法支援センター)」が平成18年10月2日から業務を開始したのに伴い廃止されました。くわしくはそよ風143号の記事をご覧ください。>

費用、立て替えます!!
裁判を受ける権利を保障

民事法律扶助法の制定
〜全国5000の弁護士事務所が窓口に〜
平成12年10月1日よりスタート


お金がなくても…
   あきらめないで!


 裁判をしたい、法的なトラブルの相談をしたい―でもお金がなくて…。こんなふうにあきらめて泣き寝入りしている人はいませんか?
 そんな人には「法律扶助制度」があります。これは、一定の要件を満たせば、資力のない人に訴訟費用や弁護士費用などを立替えてくれる制度で、憲法の「裁判を受ける権利」を実質的に保障するものです。
 これまでもこの法律扶助事業は、日本弁護士連合会(日弁連)が中心となって設立した財団法人法律扶助協会(昭和27年設立)が弁護士・弁護士会と協力した形で実施してきました。
 しかしこれは法的な位置づけはなく、多くの人びとの寄付によって運営されてきたものです。国からの補助金も昭和33年から交付されたものの額としてはわずかなものでした。しかも任意の制度のため、地域の資力によって扶助内容に差があるのが実情でした。
 今回、この法律扶助を、「民事法律扶助法」を制定し、法律によって国の制度として保証することになりました。これにより、国からの補助金も大幅にアップし、今後の財政も安定することになります。
 実際の事業を行うのは、国が指定する全国に一つの法人です。これまでの実績をふまえ、(財)法律扶助協会がこれに指定され、今後も運営がまかされることとなりました(5条)。

対象は――
資力がない(プラス)勝つ見込みがあること

表 法律扶助の資力要件
家族の人数平均手取月収
1人
18万2千円以下
2人
25万1千円以下
3人
27万2千円以下
4人
29万9千円以下
 資力要件は、収入がない人生活保護を受けている人はもちろん、右記の表以下の収入であれば扶助が受けられます。
 そうはいっても、あらゆるケースで扶助を受けて調停や裁判ができる、というわけではありません。あくまで、その主張が正当で、「勝訴の見込みがある」あるいは「和解や調停成立による解決が見込まれる」といった条件を満たしていることが必要です。事前にこの点を調査・審査の上、扶助が決定されます。
 なお、サラ金相談(自己破産事件)については、最近の相談数急増のため件数制限があり、

というさらにきびしい条件があります。

内容は――  
無料相談、書類作成費用や裁判等費用の立替え

 扶助の内容は次のとおりです(2条)。

 (a)については、勝訴等の見込みは問いません。資力要件を満たしていればOKです。
 (b)は、法律の制定に伴って新しく追加されたものです。裁判になっても弁護士をつけるまではいかず、一定の書類(訴状・答弁書等)を提出すれば足りるときに利用できます。弁護士だけでなく、司法書士に依頼したときにも扶助の対象となります。
 (c)も、弁護士の協力を得て、通常の弁護士報酬よりもかなり低く抑えられており、申込者が容易に返済できるようになっています。

窓口が全国5000以上に広がりました

 これまでは、申込みには、都道府県の弁護士会に併設された扶助協会の各支部まで、出向かなければなりませんでした。
 しかし今回の法成立にともなって、協会に登録した全国約5000人の弁護士の事務所での申込み・法律相談ができるようになりました(法6条)。
 申込時には、給料証明書などの資力証明書と家族全員の住民票(全部記載)、はんこが必要です。また、事件の内容によっては、このほかにも必要となる書類がありますので、出向かれる場合には事前に確認しましょう。

分割・無利子でゆうゆう返済

 立替えてある報酬や実費は原則として返済しなければなりません。現在は扶助決定が出た翌月から月1万円程度を返済するのが基本で、無利子です。ただ、ケースによっては返済の猶予や免除もありますので、相談されるとよいでしょう。
 立替金の額は、事件によって通常より安い標準額が定められており、審査会において決定されます。たとえば、離婚訴訟事件を依頼し、離婚が成立したとき(財産分与や慰謝料ゼロのケース)では、着手金標準額24万5000円、報酬金標準額8万円となっています(ちなみに、通常の日弁連報酬規定では、着手金30〜60万円・報酬金30〜60万円)。

法的扶助は民事だけ
  刑事事件は国選弁護

 この法律扶助の対象は、民事事件一般となっており、刑事事件は含まれていません。起訴されたときには、国による国選弁護士の制度(無料)があるからです。
 しかし、協会では自主事業として、起訴前の被疑者段階での弁護援助制度や、少年事件の付添費用を援助する活動などもおこなっています。 さらに各支部で独自に実施しているものもありますので、あきらめる前にいちど問い合わせてみましょう。

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 なお、資力要件の基準は、全世帯の下から約2割の所得層が対象となります。これは従来と同じですが、これまでは財政的に乏しいため、十分対応できませんでした。国の制度として法的に認められたことにより、今後、この基準の完全実施とさらなる充実が期待されます。




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