
〜夢のマイホーム〜良質な住宅を安心して手に入れたい!
新築住宅(基本構造部分)の保証期間10年に
耐震性・耐火性…性能の表示基準の作成
住宅品質確保促進法の制定 H12.4.1施行

多くの国民にとって、マイホームは人生一度の大きな買物といってもよいでしょう。このマイホームに致命的な欠陥があっては大変です。また、こうした大切な買物であるにもかかわらず、家を選ぶ際のデータは、立地・広さ・間取り・金額といった目に見えるものばかりで、耐震性・耐火性・遮音性などといった肝心の性能については、各業者のいうところを信ずるほかなく、比較する基準もありません。
こうした状況を改善し、良質な住宅が安心して取得できるように、新たに「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(住宅品質確保法)が制定されました。この法律が適用されるのは、工事完了後1年未満の新築住宅(店舗兼用の住宅も含む)に限られ、中古住宅は含まれません。
新法は、新築住宅を取得する契約の中に、当該住宅を引き渡したときから10年間にわたり、次の(1)・(2)の箇所について瑕疵担保責任を負うこと──引き渡した住宅に欠陥があったとき売主や請負人が一定の責任をもつこと──を明記するよう義務づけました(法87・88条、令6条)。
(1)構造耐力上主要な部分
基礎・基礎ぐい・壁・柱・小屋組・土台・斜材・床版・屋根版・横架材で、重さ・圧力・震動・衝撃を支える部分
(2)雨水の浸入を防止する部分
屋根・外壁・これらにある戸や窓・雨水の排水管のうち屋内にある部分
保証期間を短縮するなど、この規定に反し消費者に不利になるような特約は無効となります。一方逆に、(1)・(2)以外の部分についても保証するのは自由ですし、またこの保証期間も20年までは延長することが可能です(法90条)。
もし期間内に瑕疵(欠陥)が見つかった場合には、売主や請負人は、修理かこれに代わる損害賠償、場合によってはその両方を負担しなければなりません。売買契約においては、売主が修理に応じなかったり、修理不能な欠陥であれば、契約を解除することもできます。
ただし、10年の間に、自然劣化や災害によってのみ起こった不具合については、保証されていません。また、売買の際に通常の点検で発見できたような欠陥についても、対象外となります。そして争いとなった場合、瑕疵かどうかの最終的な判断は裁判所で行うことになります。
ちなみに従来は、住宅の保証についての特定の法や規定はなく、「民法」の請負契約(634・638条、注文住宅の場合)と売買契約(570・566条、建売住宅・分譲マンションの場合)の規定が別々に適用されていました(くわしくは「そよ風」68号法のくすり箱参照)。また、保証期間も特約で短くすることができたため、1〜2年という短期の保証しかない事例が多くありました。
この10年保証が義務づけられるのは、平成12年4月1日以降に締結された契約です。
次に、国が一定の客観的な基準をつくり、各住宅の品質をこれにより評価できる制度(任意・有料)が生まれました。
新たに「日本住宅性能表示基準」(現在検討中。耐久性・省エネ・防火性・遮音性など9項目にわたりレベルや数字で具体的に表す予定)が国によって定められます(法3条)。そして一定の基準を満たし指定を受けた民間の第三者機関(指定住宅性能評価機関)が、定められた検査方法で個別の評価に当たります(法7〜10条)。
評価を受けるかどうかは、施工業者や売主、施主や買主の自由です。こうして評価された住宅には、特定のマークが付いた住宅性能評価書が交付されることになります。一方、建設業者などが恣意的に紛らわしい基準やマークを使うことも禁止されます(法5条)。こうして、客観的でわかりやすく比較可能な形で、住宅の品質が表されることになりました。
評価書には、(a)設計図段階で評価したものと、(b)施工中及び完成段階で実際に何度か検査して評価したものの2種類があり、どちらも有料です。
そして、注文住宅の請負契約や新築住宅(建設中)の売買契約を結ぶ際には(a)の評価書が、新築住宅(工事完了後)の売買契約を結ぶ際には(b)の評価書が、それぞれ添付・交付された場合には、その評価書に記載された性能をもった住宅を引き渡すことが約束されたことになります(法6条。ただし、契約書にそうしない旨を記載した場合は無効となるので、ご注意)。
さらに、右の(b)の評価書が交付された住宅(評価住宅)については、もし契約上のトラブルが発生した場合にも、裁判手続きとは別に指定住宅紛争処理機関で、調停・斡旋・仲裁を受けることができます(法63条)。
この指定住宅紛争処理機関には、各地の弁護士会が中心になって指定される予定です。ここで法律・建築の専門家による紛争処理を受ければ、裁判にくらべて、迅速でしかも安価に妥当な処理が行われることになります(住宅の評価資料が残されているため証拠も揃っているし、評価書代金の一部が紛争処理費用として利用されるため)。なお、この紛争処理が一定の基準でできるように、技術的基準(見て分かる不具合と構造耐力上の瑕疵の可能性についての基準─傾斜・ひび割れ・欠損・破断などの変形で、現在検討中)が国により定められ、判断の際の参考にされることになっています(法70条)。
このほか、住宅紛争処理支援センター(財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)が設立され、あらゆる住宅取得についての相談・助言・苦情の処理に当たっています(法78・79条)。
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瑕疵担保責任についての規定は、2000年4月1日より施行されていますが、日本住宅性能評価基準や瑕疵の可能性についての技術的基準についてはこの夏に公表される予定で、実際の評価が始まるのは2000年秋になる見込みです。


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