もう1つの借家契約登場!
定期借家契約
期間満了=明渡し確実
家主・借主の合意で再契約も可
<借地借家法の一部改正>
H12.3.1スタート

借主保護に重きをおく従来型の借家契約


 借地借家法の制定(平成4年8月1日施行)によって、「期限付き」の借地や借家が新たに登場しました(くわしくはそよ風60号参照)。借地については、定期借地権付住宅などとして、通常の土地・建物を買うより安いなど、すでに広く活用・認知されているところです。
 ところが、借家については、「期限付き」借家が適用されるのは、貸主自身が転勤や親の介護で自宅を使えない事情がありやむなく貸すなどといった、きわめて限定的な特殊なケースに限られています。それ以外の大半の借家は、従来同様、借主が明渡しに同意するか、あるいは家主に「正当な事由」がなければ契約の解除はかないませんでした。つまり、家主にとっては、貸したが最後いつになったら戻ってくるかわからない不安定な状態ともいえるわけです。そのため、単身者用や新婚世帯向けの比較的回転のはやい賃貸住宅はあっても、家族向けの優良な賃貸住宅というのはなかなか見つからないのが実情でした。

期間満了で更新しない定期借家契約

 この3月1日より新たにスタートするのは、特殊な事情など一切なくとも一定期間で契約は終了され更新はしない「定期借家」(定期建物賃貸借)です(借地借家法38条)。期間は数ヶ月でも、数十年でも、貸主と借主が合意すれば、期間についての制約も一切ありません。
 ただ、「期間満了時に契約の更新がない」旨を明記した契約を書面でする必要があります。また、あらかじめ、契約の更新がなく期間満了時に明け渡す必要があることを、書面を交付して説明しておく必要もあります。これら書面による契約・事前説明をしなければ、定期借家とは認められず、従来型の更新のある借家とみなされますからご注意ください(同条1〜3項)。
 そして1年以上の契約については、期間満了日の1年から6ヶ月前の間に、家主は期間満了になる旨を改めて通知しなければなりません。もしこれを失念してしまった場合には、通知をした日から6ヶ月後が満了日とされます(同条4項)。この通知は口頭でも構わないのですが、できれば書面(内容証明郵便ならより確実)で行うほうがよいでしょう。
 もっとも、更新はないといっても、家主・借主の両者が合意さえすれば再契約はもちろん可能です。通知を受けた後は、こうした再契約の交渉や、あるいは新たな借家をさがす期間に振り向けられることになります。
 一方、借主のほうにも、契約期間中は原則として借りつづける義務があります。一方的に中途解約して出ていくわけにはいきません。中途解約するなら、残る期間の家賃を支払ったり、あるいは相当額の賠償金の支払も覚悟する必要があります。
 ただし、床面積が200平方メートル未満の住居用建物に限っては、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情があるときに限り、中途解約を申し入れて1ヶ月で契約は終了する扱いとすることが法律で盛り込まれました(同条5項)。また、契約の中で、期間途中の中途解約OKといった特約を結んでいれば、たとえ上記の法定で決められた基準にあわなくても、この特約に基づいて当然に中途解約は認められます。
 さらに、契約の際に特約で家賃についてあらかじめ定めている場合には、一般の借家契約では認められている賃料増額・減額請求権は認められないこととなります(同条7項)。


従来の契約はこれまでどおり尊重

 この定期借家制度がスタートするのは本年3月1日ですから、それまでの借家契約についてはこうした措置はありません。また、3月以降に更新する際にも従来型の契約となり、新たに定期借家契約とすることは認められていません
 ただし、事務所や店舗といった事業用の賃貸借契約に限っては、この3月以降、一旦これまでの契約を解除して改めて契約を結ぶときには定期借家契約とすることもできることとなりました。他方居住用建物については、従来の契約を解除して新たに契約を結ぶときでも、この定期借家契約とすることは「当分の間(最低4年)」できませんのでご注意ください。
 ちなみに、3月以降は定期借家契約しか結べなくなるわけではなく、従来型の借家契約を結ぶことももちろん可能です。<念のため>

*      *      *

 今回の借地借家法の改正は、「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」の中に同法改正が盛り込まれたものです。この特別措置法では、国や地方自治体が良質な賃貸住宅・公共賃貸住宅を確保するため努力することが定められました。




ホームページへカエル
「最近の法令改正」目次にもどる
次のページ(チャイルドシートの義務化と携帯・カーナビの使用禁止−道路交通法の一部改正)に進む
「借地・借家Q&A」目次にもどる