<これは、平成11年12月号の「そよ風」に掲載された記事です。その後、平成13年(2001年)6月1日より、訪問販売法は「特定商取引に関する法律」(特定商取引法)と名称が改められました。>

エステ・英会話・塾……もうやめたい!
お助けします! 中途解約制度をもうけました
訪問販売法・割賦販売法の改正
平成11年10月22日スタート

<エステの施術30回で100万円のダイエットコースを契約したが、効果がないので解約したい…><いつでも好きな時間に授業を受けられると英会話教室に1年間40万円で申し込んだが、仕事が忙しくて通えなくなった…>等々。
ここ数年、各地の消費者生活センターでは、このような相談や苦情が激増していました。しかし、街角で勧誘されて、あるいは電話で勧誘されて契約した場合でも、契約から8日間ならクーリングオフ(無料での一方的な契約解消)が認められますが(訪販法6条・9条の12、特定商取引法9条・24条)、この期間がすぎてしまうと、もはや中途解約について法の適用はありませんでした。ましてや、自分から店舗に出向いて契約した場合には、この訪販法すら適用されなかったのです。
中には、業界団体が自主的に規制基準を定めているものもありますが、加入していない中小の業者が多数をしめ、実質的に野放し状態というありさまでした。
継続的で効果が不確実なサービスを特商法(旧訪販法)で規制 |
しかし、エステや英会話教室といった契約は、(a)継続的にサービスを受けることになり、(b)達成できるかどうか不確かな目的(やせる・美しくなる・上達する等々)について契約することになるうえ、(c)長期にわたり高額の契約に拘束されるという特徴があります。
そこで今回新たに、これら特殊なサービス契約については、店舗以外での契約にとどまらず、店頭や営業所へ消費者自らが出向いて契約をした場合も含め、広くクーリングオフを認め、また中途解約についての制度も定めることとしました。
これらの規定は、“特定継続的役務提供”として「訪問販売法」の中に盛り込まれ(訪問販売等に関する法律第3章の2<平成13年6月1日より法律名が変更され「特定商取引に関する法律」第4章>)、平成11年10月22日より施行されています。
4つの業種を規制対象に <平成16年1月1日よりさらに2業種が追加されて6業種が規制対象> |
今回「特定継続的役務提供」として指定されたのは、もっとも苦情の多い次の4つの業種<現在は以下の6業種>です(令別表5)。
(1) エステティックサロン
(2) 外国語会話教室
(3) 家庭教師派遣
(4) 学習塾
(5) パソコン教室(平成16年1月1日より追加)
(6) 結婚情報サービス(平成16年1月1日より追加)
対象となるのは、サービスの提供期間が(1)は1ヶ月、(2)〜(6)は2ヶ月を超える期間にわたり、さらに金5万円以上の契約です(旧法17条の2=新法41条、令11・12条)。なお、(4)の対象となるのは、現役の生徒や学生に入試や補習のために教える塾ですから、浪人だけを対象とした予備校は対象外です。ただし、現役生・浪人生のどちらも受け入れている予備校では法が適用される扱いとなっています(学校法人は適用外)。
このほかにも、資格取得講座やワープロ・パソコン教室、結婚情報サービスなど、被害が出ている継続的なサービスもありますが、今回は指定が見送られました。<このうち,ワープロ・パソコン教室と結婚情報サービスの2つが,平成16年1月1日より追加されたものです>
特定継続サービスでは、とくに契約締結までに、契約の概要について記載した書面をあらかじめ交付することが義務づけられます(旧法17条の3=新法42条)。また、確実に10kgやせるとか、見違えるような美肌にとか、合格保証といった誇大広告もきびしく禁止されています(罰金100万円以下、旧法17条の4・23条=新法43・72条)。
そして特定継続サービス契約については、従来の訪販法で規定されるような訪問販売・キャッチセールスなどといった形でなくとも、たとえ消費者自ら店舗に出向いて契約したものであろうと、8日間のクーリングオフ期間が認められました(旧法17条の9=新法48条)。
表1 特定継続サービスの関連商品(令別表6)
サービスの種類 |
指 定 関 連 商 品 |
エステティック |
いわゆる健康食品、化粧品・石鹸・浴用剤、
下着、美顔器などの美容機器 |
外国語会話教室
家庭教師派遣
学 習 塾 |
書籍、ビデオテープ・カセットテープ・
CD・レーザーディスク等、
ファクシミリ機器・テレビ電話 |
パソコン教室 |
パソコンとその部品・附属品、書籍、
ビデオテープ・カセットテープ・CD・レーザーディスク等 |
結婚情報サービス |
真珠・貴石・半貴石、指輪その他装身具 |
さらにこれらの業種では、サービスに加えて、美顔器や化粧品、教材などという一定の商品を抱き合わせて売ることが頻繁に行われています。そこでこれら関連商品(表1、サービスを受けるのに必要ということで購入したもので、消費者が任意に購入したものは含まない)についても、サービス契約の解除と同時に解約できることになりました。ただし、クーリングオフの通知はサービスと関連商品について各々行う必要があります(法同条2項、令14条)。
<なお、平成16年1月1日より、特商法が改正され、もしクーリングオフを妨害するような行為があれば、いつでもクーリングオフできるなど、契約の撤回・取消しが一層容易になりました(くわしくはそよ風133号参照)>
さらに、中途解約の制度がつくられました(旧法17条の10=新法49条)。
クーリングオフ期間がすぎても、消費者は理由のいかんを問わず一方的に中途解約することができます。たとえ契約書に中途解約不可と記載されていても、すべて無効です。業者は、中途解約を理由にむやみに損害賠償や法外な違約金を請求することはできませんし、中途解約に応じて清算しなければなりません。
表2 中途解約の解約料に対する制限
サービスの種類 |
サービスを受ける前 |
一部サービスを受けた後の中途解約 ※ |
エステティック
外国語会話教室
家庭教師派遣
学 習 塾
パソコン教室
結婚情報サービス
|
2万円以下
1万5000円以下
2万円以下
1万1000円以下
1万5000円以下
3万円以下 |
契約残額の10%以下(ただし上限2万円)
契約残額の20%以下(ただし上限5万円)
1ヶ月分の料金以下 (ただし上限5万円)
1ヶ月分の料金以下 (ただし上限2万円)
契約残額の20%以下(ただし上限5万円)
契約残額の20%以下(ただし上限2万円) |
| |
※ 上記解約料に、これまでに受けたサービス分
の代金を加算して支払うこととなる。 |
この解約手数料についても、その上限が定められました。サービスを一度も受けることなく解約するなら、表2中欄の解約料を支払うだけでOKです。また、何度かサービスを受けたあとでも、すでに受けたサービス分の代金に表2右欄の解約手数料を合算したものを支払えばよいのです(令15・16条)。
表1の関連商品についてもあわせて中途解約できます。もっとも、使用していればその使用料に相当する金額を、返還できないときには代金全額を支払わなくてはなりません(法同条7項)。
表3 訪販法で平成11年10月より新たに追加指定されたのは……
商 品(令別表1)
◇ ソーラー(太陽光)発電装置
◇ かび防止剤・防湿剤
◇ 融雪機などの家庭用の融雪設備
サービス(令別表3)
☆ エアコン・布団のクリーニング
☆ ソーラー発電装置・家庭用融雪設備の取付けまたは設置
☆ 映画鑑賞チケット
☆ ソーラー発電装置・ソーラーシステムの修繕または改良
☆ 靴などの修理・畳の張り替え
※ これは追加指定されたものだけです。
多数の商品・サービスが施行令で指定されています。
是非ご確認ください。 |
このほか、訪問販売法が適用される指定商品・指定サービスに、ソーラーシステムや靴の修理・布団のクリーニングなど、近年トラブルが起こっているものが、表3のとおり新たに追加されました(令別表1・3)。<商品・サービスの指定制は,平成21年12月1日に廃止され,原則としてあらゆる商品・サービスが法の対象となった。(くわしくはそよ風162号参照)>
また、罰則規定も大幅に強化されています。たとえば、ウソを言ったり威迫して困らせて契約をとったり解約の妨害をするなどの禁止行為をすると、2年以下(従来は1年)<平成21年12月より”3年”>の懲役または300万円以下(同100万円)の罰金となり、場合によっては懲役と罰金が同時に科されることとなります(旧法22条=新法70条)。業務停止命令に違反した法人に対しては3億円以下(同100万円)の罰金刑に処すると大幅な引上げがなされました(旧法24条=新法74条)。
特定継続サービスでは、契約金額が高額になるため、実際には分割払いとするケースがほとんどです。そこで、中途解約はしたけれど金融機関への返済だけは残される、などということのないよう、「割賦販売法」もあわせて改正されました。
エステ・語学学校・家庭教師の派遣・学習塾の4つの業種<平成16年1月1日より,パソコン教室・結婚情報サービスの2業種も追加され,現在は6業種>を「指定役務・権利」として定め、これらについても割賦販売法の対象としたものです(法2条、令別表1の2・別表1の3)。これにより、4業種<現在は6業種>との契約についてクーリングオフや中途解約したときには、クレジット会社などの金融機関との分割弁済契約も連動して解除できることとなりました(抗弁権の適用、法29条の4・30条の4)。<平成21年12月1日より,とくに個別クレジット契約については,クーリングオフ制度も導入されました(くわしくはそよ風162号参照)。>
* * *
ちなみに従来は、分割払い契約を結んだものの、サラ金との金銭消費貸借契約になっていて、それがいったん消費者の手を通して販売業者に支払われる場合には、割賦販売法が適用できず、解約したもののローンだけが残るといった脱法行為が行われていました。消費者は契約解除のときにはじめて気付くわけで、こうした法律逃れができないよう、適用範囲の改正がおこなわれました(法2条3項)。


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