
国際競争に生き残る!――商法の一部改正
株式交換制度の創設
企業グループの再編を容易に
平成11年10月1日施行

ある会社が他の会社の株を手に入れてその会社を子会社(商法や独禁法では、株式の50%以上を親会社に所有されている会社をさす)にするには、われわれ一般の個人株主と同様、株式市場や個々の株主から株を購入しなければなりません。こうした煩雑で時間のかかる手続きを経ず、子会社となるべき会社の全株式を一括して親会社が入手できる制度が新たに設けられました。

これは、株式交換制度とよばれ、親会社が子会社のすべての株式を所有するとき(完全親会社)に限り認められる手続きです(352〜363条)。事前に株主総会の特別決議で承認を得たうえで、あらかじめ定めた日にちに、子会社の株式は一斉に完全親会社のものとなります。そして子会社の株をもっていた株主には、代わりにこの親会社の新株が割り当てられ、今度は新たに親会社の株主になるという仕組みです。もしこの株式交換に反対ならば、株主は自分の株式を会社に買い取ってもらうことができます(株式買取請求権、355条)。
このほか、これと同様の手続きで、いくつかの会社が集まり完全親会社を新たに設立することもできることとなりました(株式移転制度、364〜372条)。
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今、企業は、大胆な組織改革や再編を迫られています。近年の長引く不況はもちろん、国際化の進展、国際競争の激化、そして経済構造の改革に対応する方途が問われているのです。そのため、資本・人材の最適な配置、新規産業への戦略的展開、既存事業の効率化等々、生きのこりをかけた緊要で重大な模索がなされています。
こうした中で、すでに平成9年には独占禁止法が改正され、戦後は全面的に禁止されていた「持ち株会社」が解禁されました。今回の商法改正も、こうした持ち株会社をはじめとした親会社が、機敏に企業グループの再編を行えるようにとの制度改革がなされたものです。
☆「持ち株会社」の解禁
戦前の財閥が、強大な経済力を背景に、経済的な支配にとどまらず社会的・政治的にも弊害をもたらしたことを反省し、財閥解体と同時に、昭和22年、独占禁止法が制定されて「持ち株会社」が全面的に禁止された。
持ち株会社とは、(1)株式を所有することで会社の事業を支配し、(2)そのこと自体が主たる事業となっている会社のこと。つまり、単なる親会社にとどまらず、子会社の支配そのものが会社の事業の中心となっている(総資産の過半数が子会社の株)ものをいう。
平成9年の独禁法改正により、多分野の子会社をもちその総資産が15兆円を超えるなど(右図)、極端に大きな影響力をもつ場合(事業支配力が過度に集中することとなる持株会社)をのぞき、一般に持ち株会社を自由に設立できるようになった。ただし、資産総額が3000億円を超える持ち株会社については届出や事業内容の定期的な報告が必要。もし一定以上に持ち株会社が巨大化した場合は、公正取引委員会が行政処分により子会社の切り離し等を命ずることとなる。


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