21世紀の司法のあるべき姿は?
司法制度の抜本的見直しに向けて
司法制度改革審議会設置法
2箇年の時限立法 /H11.7.27施行/



 21世紀に向けて司法制度を抜本的に見直すための審議会が法律をもって設置されました。この法律は平成11年7月27日に施行されて、2年後には失効が予定されています(時限立法、法附則3項)。2年間で社会の実情に対応する新しい司法のあり方を審議し、改革についての具体策を内閣に提言することになっています。すでに審議会の委員13名が国会の承認を得て内閣により任命され(法3・4条)、右の施行日当日に、第1回の審議会が首相官邸で開催されており、さらに会合が重ねられようとしています。
 いま、司法の抜本改革が問題にされるにいたった大きな理由のひとつとして、国際化の進展する中で、法的紛争の迅速な処理を求める経済界の強い要請があります。しかしそれだけではなく、戦後わが国が「小さな司法」を放置して司法の充実や改善を怠ってきたことへの反省があります。とりわけ近年は、法曹界を中心に司法改革の必要性が議論されてきましたが、改めて国民的な視点で議論を進められねばなりません。したがってこの審議会の論議は可能な限り国民に内容を示し、透明性の確保につとめることが要請されることになっています(衆参両院法務委員会の附帯決議)。
 これから、たとえば次のような項目について、調査・審議が進められると見込まれます。

  1.  まずわが国は、国際比較でみると裁判官・検察官・弁護士の人口に対する数がきわめて少ないが、これからその増加養成をどうするのかの点があります。
  2.  また、「はやい司法」を求める経済界の要望への対応があります。とりわけ知的所有権等の民事裁判の促進が強く求められています。
  3.  経済的に困っている人に裁判費用を用立てる法律扶助制度は、わが国はきわめて微弱であり、その根底には国家予算にしめる司法予算のウエイトが他国に比べてきわめて低いという問題があります。
  4.  弁護士のいない地区での法的サービスの確保(公設弁護士事務所の設置など)をどうするかも問題です。
  5.  陪審制(市民が陪審員となって裁判に参加する、アメリカ)や参審制(裁判官が市民と合議する、ドイツ・フランス)などにより国民の司法制度への関与を認めるかどうか。
  6.  また弁護士などで社会的経験を経たうえで裁判官になる法曹一元制度を進めるかどうかも検討課題として議論になることが予想されます。

 元日弁連(日本弁護士連合会)会長の中坊公平氏が、この国の実情を「2割司法」(国民の紛争を解決するうえで司法は求められる役割を2割しか果たしていない)と評し、このたび司法制度改革審議会の会長に就任した佐藤幸治京大教授は、「国民からみて司法が遠すぎる」と就任会見で述べています。
 戦後、長期にわたって司法は、票にも、もうけ話にもならない分野として、政治からも徹底的にうとんぜられてきました。このたびの司法改革への取組みが、国民の利用に視点をおいた開かれた司法に向かって改善を加速するものとなることが望まれます。




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