
☆★☆労働基準法の一部改正☆★☆
変形労働時間制
1ヶ月単位→労使協定でも導入OK
1年単位→1ヶ月ごとにスケジュール決定でOK
平成11年4月1日スタート

本年(1999年)4月1日施行の改正労働基準法では、変形労働時間制についても、その一部が改正されました。
変形労働時間制には、変形の単位によって、(1)1ヶ月単位(一ヶ月以内の期間)、(2)1年単位(1ヶ月〜1年以内)、(3)1週間単位、(4)フレックスタイム制の4つがあります。今回は、このうち1ヶ月単位と1年単位の変形労働時間制について改正されています。
1ヶ月単位の変形労働時間制は、従来、使用者が就業規則などで規定すれば導入することができました。これを今改正で、労使協定によっても取り入れることができるようにしたものです。
労使協定とは、労働者の過半数で組織する労働組合、これがない場合には労働者の過半数を代表する者と、使用者の間の書面による協定です。使用者からの一方的な押しつけではなく、双方納得のうえでの導入が期待されます。
なお、この労使協定の内容は労働基準署に届け出なければなりませんし、改めて就業規則にも定めることが必要です(法32条の2)。
1年単位の変形労働時間制(1ヶ月を超え1年以内を変形の単位とする)は平成6年に新たに導入された制度ですが、今改正でその運用が大きく変わりました。
- (1)労使協定で「特定期間」を定める
- もともと、この制度は対象期間が長いため、忙しい時期にあまりに過酷な労働時間の集中がおこる可能性もあることから、使用者が一方的に導入を決めることはできず、前述の労使協定で労使双方納得のうえ、書面で確認することになっていました。今改正で、その協定の中に、特定期間として特に業務が繁忙な期間を定めることとしました(長さ等についての法規制はない、法32条の4第1項3号)。
- (2)具体的な日程は、1ヶ月ごとに決めればOK
- 従来は、変形労働期間のすべてにわたって、あらかじめ労働日を決めておく必要があり、くわしい労働時間については最低3ヶ月ごとに決めることになっていました。
- 今改正で、あらかじめ全期間にわたる労働日までは決める必要はなく、総労働日数と総労働時間を決めておけばよいこととなりました。また、くわしい労働日と労働時間については、最低1ヶ月ごとに労使で決めて、30日前までに知らせれば足りることとしました(法32条の4第1項4号・同第2項)。
- このため、これまではある程度先のスケジュールもたてることができましたが、今後は最初の1ヶ月についてしか各労働日・労働時間が決まらず不便なことになりそうです。
- (3)労働時間の上限規定も変更
- 変形期間の長さに関係なく、1日10時間・1週52時間を限度とし、これを超えて労働時間を設定することはできません。変形の対象期間が3ヶ月を超える場合にはさらに、労働日数についての限度が設けられ、年当たりで280日とされました。またこの場合、週48時間を超える週は連続なら3週まで、頻度は3ヶ月に3回までと定められています。
表 3ヶ月以上の変形労働時間制の時間外労働の上限基準
期 間 |
限 度 時 間 |
1週間 |
14(15)時間 |
2週間 |
25(27)時間 |
4週間 |
40(43)時間 |
1ヶ月 |
42(45)時間 |
2ヶ月 |
75(81)時間 |
3ヶ月 |
110(120)時間 |
1年間 |
320(360)時間 |
但し、( )内は一般の労働者の場合 |
- 連続して働かせることのできる日数は6日まで、ただし(1)の特定期間については1週間に1日の休日が確保できればよいとされました。つまり特定期間中は最長12日間連続で働かせることも可能です(法32条の4第3項、規則12条の4)。
- なお、時間外労働の上限についても、変形期間が3ヶ月を超える労働者に対しては、一般労働者よりもきびしい規制がもうけられています(労働省告示)。
- (4)途中退職・中途採用者にも適用可
- これまでは変形期間の全般にわたって働ける者のみが対象とされていたため、途中で定年を迎える者や、期間半ばで雇い入れた者は別枠で働くこととなっていました。この不便を解消するためにとられた措置です(法32条の4第1項1号)。
- もっとも、忙しい時期に入社したような場合には、平均で法定の週40時間労働を超える状況がでてくることも考えられます。そこでこのときには、25%以上の割増賃金を支払うこととしました(法32条の4の2、37条)。
* * *
変形労働時間制は、上手に取り入れれば労使双方にとってメリットのあるものです。しかし、使い方を間違えれば、単に不規則な勤務形態、激務の押しつけにもなりましょう。時短を進めほんとうに豊かな社会にするための手段として有効に使いたいものです。


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