介護休業いよいよ全事業所で義務化
平成11年4月1日からスタート
最長3ヶ月、家族1人に1回まで
育児・介護休業法の改正

介護のため退職する!?――→休業制度の導入


 1980年代に入り、わが国の政策は、介護を必要とする者の世話は公的施設でという考え方から、在宅介護中心へと大きく変わりました。
 急激な高齢化社会を迎え介護を要する者が急増しています。来年(2000年)4月から介護保険制度がスタートしますが、自宅での介護を応援する社会制度はまだまだ未整備なままです。そのため、本来、在宅介護イコール家族による介護ではないはずですが、現実には家族に大きな負担がかかっているのが実情です。
 1997年10月までの1年間をみると、家族の介護・看護のために仕事をやめた人は約10万人にものぼり、しかもそのうち9割が女性労働者となっています。これに対し、96年度の労働省調査によれば、民間の事業所で介護休業制度があるところは2割にすぎません。
そこで、平成7年(95年)に育児休業法が改正され、介護休業の制度が盛り込まれることになりました。以来、4年の準備期間を経て、本年(1999年)4月1日からは、全事業所に対してこの介護休業制度が義務化されました。これに伴い、法律の名前も「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育児・介護休業法)と改められています。

介護休業は――  
対象家族1人につき1回  最長3ヶ月まで

 介護休業の対象となる労働者は、日々雇い入れる日雇い労働者や期間を限定した期間雇用の労働者を除くすべての労働者です。ただし、労使協定を結べば、1)働きはじめて1年未満の者、2)3ヶ月以内に退職予定の者、3)労働日が週2日以内のパート労働者に限っては、除外することもできるとしました(法2条1号、12条2項)。
 介護休業がとれるのは、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする家族がいる場合です。ここでいう「家族」とは、配偶者(内縁も含む)・父母・子・配偶者の父母と、同居し扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫に限られています(法2条2〜5号、規則1・2条)。
 介護休業の期間は、原則として最長3ヶ月です(後述の勤務時間を短縮する等の措置をとっているときはそれを含めて3ヶ月、法15条)。また、対象家族1人につき、休業できるのは1回限りです(法11条1項)。期間が短いようですが、中小企業も含めてあらゆる事業所に適用する制度であるため、緊急避難的な措置、とりあえず今後の介護体制の手配ができる期間をとの考え方で定められたものです。

介護休業を理由に
  解雇は許されません


 休業するには、その2週間以前に、休業開始日と終了日を明らかにして書面で申し出る必要があります(診断書などの必要書類の提出を求められることもある。法11条2項、規則22条)。申し出るのが2週間を切ってしまうと、事業主は開始日の変更を要請することができます(ただし、申出日より2週間以内の範囲。法12条3項)。
 しかし事業主は、この介護休業を拒否することはできません。また、これを理由に解雇することも許されません(法12条1項、16条)。
 <この後、育児・介護休業法は改正され、平成13年11月16日より、解雇だけにとどまらず、「その他不利益な取扱いをしてはならない」と明文化されました。くわしくは「そよ風」116号
 一方、もし都合で介護休業をとらなくてもよい事情になったら、開始日の前日までなら、いつでも撤回できます。さらに、撤回後に事情が変わって休業の必要が出てきたら、あと1回に限っては再度の休業申出をすることができます。しかし2回撤回してしまうと、もはや休業申出を事業主から拒否されてもやむを得ないことになります(法14条)。
 逆に、終了日については、その2週間前までに申し出るなら、1回に限り、後の日にちに変更することが可能です(もちろん期間は3ヶ月以内であることが必要。法13条)。

介護休業以外にも…  介護を支援するために…


 この介護休業制度とは別に、やはり働きながら介護をという労働者のために、3ヶ月以上の期間にわたり勤務時間の短縮等の措置をとることが義務づけられました。このため事業主は、次のうち、少なくともいずれかひとつの措置を導入する必要があります(法19条2項、規則34条2項)。

 このほか、家族を介護する必要のある労働者には、育児中の労働者とともに、深夜労働(午後10時〜午前5時)についての制限が決められています(くわしくはそよ風98号)。

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 一方、この育児・介護休業法と同時に、雇用保険法も改正され、新たに介護休業期間中、賃金月額の25%を介護休業給付金として受け取れる制度が整いました。これにより、少しでも介護休業がとりやすいようにとの配慮です。ただし対象となるのは、介護休業開始前の2年間に被保険者期間(賃金支払基礎日数が11日以上ある月)が12ヶ月以上ある者に限られています(育児休業者への同様の制度はそよ風75号参照)。
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 この法律で定められた基準は、あくまでも最低の基準を定めたものにすぎません。すでに平成8年(96年)12月からは、人材派遣業法の改正により、育児・介護のため休業する労働者のピンチヒッターとしてなら、業種を問わず派遣労働者を雇い入れることもできます(そよ風87号)。これらの制度を活用し、介護休業制度を確実に遵守することはもちろん、事業所ごとにできるだけ引き上げられるよう努力が求められています。




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