だからだからと決めつけないで!
共同参画基本法の制定
男女平等な社会とするための指針〜
平成11年6月23日公布・施行


 男女共同参画社会基本法──耳慣れない言葉を掲げた法律がまたひとつ制定されました。わが国で16番目の基本法となります。
 この法律は、男女平等な社会の実現に向けての考え方をまとめたものです。抽象的で難しそうな内容……いえ、いえ、日常生活にも直接影響を与えるとっても身近な法律、女性・男性ともに必見、是非知っておきたい法律です。

男女平等な社会に向けて   明確な方向を示す


 土地基本法(そよ風45号)や環境基本法(70号)など、「基本法」はその性格上、多くが抽象的な表現にとどまります(宣言法)。しかし、憲法と個別の法律の間にあって、全体としての方向づけをする法律でもあります。個々の法律や政策を総合的にまとめていく基本的な考え方をあらわしている法律であるだけに、より広い範囲に影響を及ぼすともいえましょう。
 さて、憲法では、侵すことのできない永久の権利として基本的人権が定められ、その中に法の下の平等・性別による差別の禁止が明記されています(11・14条)。そしてすでに、1986年には男女雇用機会均等法(そよ風2299号)が、また男女平等な社会を支援する制度として1992年には育休法(58号)が制定されるなど、個々の法律も整備されてきました。
 そして新法では、男女平等な社会のあり方について、さらに踏み込んだ規定がなされています。

悪気なしでも差別はダメ!
   性別の固定観念にもメス!
      家庭においても平等を…


 まず、男女共同参画社会をめざす5つの基本理念を確認しました(3〜7条)。


1)人権の尊重
 個人としての尊厳を重んじ、性別による差別を受けないこと、そして個人として能力を発揮する機会が確保されること。
 ここでいう差別とは、明らかに差別しようという意図がある場合に限らず、結果としての差別的取扱いも許されないと解釈されています。

2)社会制度・慣行への配慮
 社会制度や慣行が、性別による固定的な役割分担意識を反映して、平等な社会の実現を阻むことのないよう、できるだけ中立的なものとするよう配慮すること。
 男は仕事・女は家庭、ぼく食べる人・君つくる人、男はたくましく・女はやさしく等々といった固定観念が平等な社会を阻害する大きな要因であり、これを見直すことが重要な視点であることをとくに指摘したものです。

3)政策立案・決定への共同参画
 国や自治体あるいは民間においても、男女が対等な構成員として参加し、政策や方針の立案・決定を共同で行えること。
 たとえば、公的な分野で女性の占める割合は、国会議員では衆院で5%・参院で17%、国家公務員の課長クラスではわずか1%にすぎません。原則として、4対6以上の比率の開きは平等ではないと考えられます。


4)家庭生活と他の活動の両立
 男女がともに家族の一員としての役割を果たし、仕事や地域社会などでの活動と両立していけるようにすること。
 すでに、育児・介護などの家庭生活における責任も男女で担うことを前提に、育児・介護休業法も制定されています。

5)国際的協調
 国際的協調の下に取組みを進めていくこと。
 国連では、1975年を平等・発展・平和を掲げた国際婦人年としたのに続き、その後の10年を国連婦人の10年と位置づけ、さらに1985年にはナイロビで婦人の地位向上のための将来戦略が採択されました。来年がその目標年となっており、6月にはニューヨークで「女性2000年会議」が開催される予定です。

差別はダメにとどまらず 積極的に平等を求めて


 これらの基本理念を実現するために、差別を禁止するだけではなく、現在ある格差を解消するための積極的改善措置(ポジティブ・アクション)を含めた施策を策定・実施することが義務づけられました。つまり、男女間の格差を是正するために必要ならば、男女の一方だけを優遇する措置をもとろうというものです(2条2号)。
 そして基本的な施策として、政府は、男女共同参画基本計画を定めて公表すること(13条)、これを受けて、都道府県・市町村においても、各地域の特性を加味して各々独自の男女共同参画基本計画を立てること(9・14条)、そして、国民に広く理解を深めるための広報活動を行うことが義務づけられました(16条)。とくに、政府は、毎年、国会に対して、その年の現状と施策を報告し、これからの施策を提出することとなります(12条)。
 このほか、国は、苦情処理や被害者救済のための措置をとることや、この問題について調査研究を進めることが義務づけられています(17・18条)。
 なお、前述の国の基本計画の策定にあたり、調査・審議し意見を述べる機関として、男女共同参画審議会が設けられています(学識経験者25人以内で構成。男女いずれかが10分の4を切ってはならない。21〜26条)。この審議会では、このほかに、各大臣からのさまざまな諮問に応じて調査・審議し意見を述べることになります。

高齢化社会の到来―――男女平等は待ったなし!


 さらに、この基本法の15条では、国や地方自治体は、各種の法や条例を作成したり運用する場合、男女平等な社会の実現に向けての影響を考慮することが定められました。
 つまり、たとえば、民法をめぐっての夫婦別姓問題、税制での配偶者控除等の措置、年金・保険制度が世帯単位で考えられている現状等々、これまで論議の対象とされてきたこれらの広い問題についても、これからは、この基本法の視点─男女平等社会の実現に向けて─に立って検討されねばならないと宣言したわけです。
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 2000年には高齢者人口の割合は全人口の17.2%と、世界最高水準に達しようとしています。また2050年には32.3%にもなると推定されます。世界に例をみないほどの急速な高齢化社会を迎えて、まさに「21世紀の我が国社会を決定する最重要課題」(前文)として、男女平等な社会の実現は急務となっているのです。もはや、女性労働力の社会参加なしには、日本社会は支えきれない時代がやってきたといえましょう。




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