担保や保証人をとる
場合の心得
お金を貸したり、継続的に掛け売りで取引をする場合の相手方に十分な信用や目ぼしい財産がないときに、保証人をたててもらったり、第三者の財産を抵当に入れてもらうことがよくあります。
ところが、注意しなければならないのは、その際の保証契約や抵当権設定の担保契約が、当方(貸主)と相手方(借主)との間で結ばれるのではなく、これらの契約が、当方と第三者である保証人や抵当権設定者との間で結ばれるものであることです。
したがって、たとえば保証契約を結ぶ際、貸主と保証人とが実際に会って、お互いの目の前で保証契約書に署名・押印すれば問題はありません。
しかし、実際多くのケースにおいて、貸主が借主に保証人をつけるように求めると、借主は保証人のところに頼みに行き、契約書の保証人欄に署名・押印してもらって貸主のところに持ってきます。
また、第三者の土地や建物に抵当権等の担保をつけるときは、通常、借主が担保を設定してくれる第三者(物上保証人という)を訪ねて、土地や建物の権利証(正確には登記済証という)・実印・印鑑証明書・委任状等を預かってきて、この物上保証人の不動産に抵当権等をつけます。
このような場合、借主は保証人の代理人として行動しているのです。したがって保証契約の当事者は、あくまで、貸主と保証人であることはいうまでもありません。
では、貸主は、借主が保証人欄に署名・押印した契約書や、権利証・実印・印鑑証明書・委任状等の書類を持ってきたら、安心して契約をしてよいのでしょうか。
借主が権利証等の書類を保証人の承諾を得て持参したのであれば何ら問題はなく、保証契約が有効に成立することはもちろんです。しかし、借主が、保証人の承諾を得ていなかったり、保証人が承諾した範囲を超える契約(たとえば、10万円の借金の保証を承諾したのに20万円の保証契約をした場合等)を勝手に結んでしまうことがあります。このような場合は、借主が、代理権を有していなかったり、代理権の範囲を超える契約をしたことになるので、厳密にいえば、保証人に契約どおりの責任が問えないのが原則です。
しかし、借主に代理権がなければ、どのような場合でも保証人の責任が問えないのでは不都合なので、第1〜第3のタイプのように、保証人にある程度の落ち度がある等の場合で、しかも借主が代理権を持っていると貸主が考えても無理からぬものと認められる事情(正当事由)があるときは、保証人に契約どおりの責任が問えることになっています(民法109・110・112条)。
そして、これらの各タイプのいずれにも、貸主が代理権を持っていると考えるのももっともだという事情(正当事由)が必要なのです。
たとえば、借主が保証人の土地の権利証・実印・印鑑証明書を持っていた場合は、もちろん正当事由を求める方向に有利に働きます。がしかし、これだけでは正当事由の決め手にはならず、他の事情も総合的に考慮されます。たとえば、以前にもその人に保証人になってもらったことがあるか、保証人と面識があるか、貸主が金融業者か否か、保証人の意思を確かめるのが容易か、保証人と借主の関係、保証責任の重さ等が考慮されます。判例の傾向としては、金融機関が貸主の場合は、ある程度の調査義務を認め、簡単な調査さえ(保証人に電話で意思を確かめる等)していないときは正当事由を認めないようです。
そこで貸主としては、借主に任せきりにしないで、直接に保証人に会うか、連絡をして保証の意思を確かめた方が無難です。
また、事前に保証人の意思を確認できなかった場合には、遅滞なく次のような通知書を送っておく方法も、事故予防の知恵といえるでしょう(もし無断で保証人にされていたり担保をつけられていたりすれば、第三者はただちに連絡してくるはずです)。
弁護士 Y